2ストロークエンジンとは?

ライダーの皆様、2ストロークエンジンの仕組みをご存知でしょうか?長年バイクに乗っている方や、2ストローク車が好きな方はよく知っていると思います。知らない方でも、甲高い音で白煙をあげながら走っているバイクを見たことあるのではないでしょうか。そのバイクは2ストロークエンジンが積まれています。因みに管理人の愛車「LMLスターデラックス」は、2ストローク車です。しかしながら日本では年々排ガス規制が厳しくなるに連れて、2ストローク車は生産されなくなり、現在はほとんどが4ストローク車に取って代わりました。それでもいまだに愛好者がいる、魅力がたくさんの2ストロークエンジンについて4ストロークとも比較しながら迫っていきたいと思います。

我が家のLMLスターデラックスは2ストローク車です

①2ストロークと4ストロークの違い

それではまずは、2ストロークと4ストローク、一体何が違うのかを解析していきたいと思います。

A. エンジンの仕組みが違う

4ストロークのエンジンの仕組み

「吸気」・「圧縮」・「爆発」・「廃棄」という4工程を1つのサイクルで行います。4ストロークのことを4サイクルと言う場合もあるようです。

4ストロークエンジンの仕組み(Bike Life Labさんから引用)

・2ストロークのエンジン仕組み

ピストン上昇時に「吸気・爆発」、ピストン下降時に「爆発・排気」の2工程を1つのサイクルで行います。

2ストロークエンジンの仕組み(Bike Life Labさんから引用)

クランクシャフトが2回転で4ストローク(以下4スト)は1回爆発しますが、2ストローク(以下2スト)は毎回爆発することになります。同排気量であれば、2ストのピークパワーは4ストの倍くらいあると言われています。そして2ストエンジンはカムやバルブ機構がないので、4ストに比べて軽量かつシンプルに作ることができます。

B. エンジンオイルの役割と種類が違う

エンジンの機構が異なるので、エンジンオイルの役割や種類も違ってきます。下の写真は、左が4スト用(ドゥカティ848に使用)で右が2スト用(LMLスターデラックスに使用)のエンジンオイルです。

・4ストロークにおけるエンジンオイルの役割

4ストにおけるエンジンオイルは潤滑油です。わかりやすく言うと、エンジンが心臓ならエンジンオイルは血液です。エンジンオイルはエンジン下部にあるオイルパンに入っていて、それをオイルポンプで汲み上げてエンジン各所に送られます。

①潤滑:シリンダー内部では、ピストン・クランクシャフト・カムシャフトが1分間で数百〜数千回転の高速運動をするので、そのために生じる摩擦や焼き付きを抑える為に、エンジンオイルで潤滑します。

②冷却:エンジン各部は燃焼や摩擦によってとても高温になります。エンジン内を周り熱を吸着したエンジンオイルは、オイルパンに戻り冷却されます。その際、空冷式もしくは水冷式のオイルクーラーをつけて冷却を促進しています。

③洗浄:エンジンは燃焼や回転作業によって汚れが発生します。この汚れをエンジンオイルが吸着して、特定の場所に堪らないようにしています。エンジンオイルが黒く汚れていくのは、洗浄作用が正常に行われいる証と言えます。

④防錆(ぼうせい):エンジン内部は燃焼により高温となる為、外との温度差により水分が発生しやすくなります。それが錆の原因となりますが、エンジンオイルが錆の発生を予防する役割を担っています。

・4ストロークに使用するエンジンオイルの種類

4ストのエンジンオイルは、ベースオイル(化学合成油・部分合成油・鉱物油)に添加剤を足したモノになります。また、4ストのオイルにはSAE規格というものがあって、オイルの低温時と高温時の粘土を表しています。冬場にはWの前に数時が少ないオイルを、夏場にはWの後ろの数字が多いオイルを使用します。(バイクによるので詳しくは、それぞれの取扱説明書をご確認ください)

2ストロークにおけるエンジンオイルの役割

2ストにおけるエンジンオイルの役割も潤滑油なのですが、4ストとは違った働きをしています。

2ストエンジンでは、ピストンが下降する際にクランクケース内で混合気を一次圧縮して燃焼室に送り込みます。クランクケースの内部が吸入経路になっているため、エンジンオイルにガソリンを混合して潤滑されます。この用途に特化した潤滑油が2ストオイルで、4ストとは異なり、燃焼室内で燃焼して排出されます。つまり、2ストのエンジンオイルは循環するわけではなく、燃焼して無くなってしまうという事です。

エンジンオイルと混合する機構は、下記の種類があります。

混合給油形式:昔のバイクは、燃料を入れる際、ガソリンに2ストロークオイルを混合しながら給油。古いペスパに乗っている友人は、ガソリンスタンドで給油する際に計量カップでエンジンオイルを計りながらガソリンを入れていました。確かガソリンの2%分のエンジンオイルを入れていたと記憶しています。

分離給油形式:後に、燃料タンクとは別に2ストロークオイルタンクを設ける分離給油方式が主流となりました。分離型は、2ストオイルが無くなりそうになったら継ぎ足します。(オイル警告灯がつくバイクもあります)

LMLの給油口は左がオイル右がガソリンの分離型です

混合型も分離型も、2ストオイルを足してやらないとノッキングやエンジンの焼き付きの原因になりますので、最善の注意が必要です。

・2ストロークに使用するエンジンオイルの種類

2ストのエンジンオイルは、ベースオイル(植物油・半化学合成油・化学合成油)に添加剤と希釈剤を足したモノになります。2ストオイルは燃料と混合し、燃焼して白煙として排出されます。その白煙を減少させるために、化学合成油にはモリブテンという物質が含まれています。添加剤にはピストンを清浄に保つために清浄分散剤が使われています。また燃料と混合しやすいように、灯油留分が希釈されているようです。

C.エンジンオイル交換の有無

・4ストロークはエンジンオイル交換が必要

4ストのエンジンオイルは、循環式の為オイル交換が必要です。一般的には、3000キロに1回オイル交換をします。また2回のオイル交換に1回は、オイルフィルターを交換します。但しレースの世界で使用する低粘土&高性能のレーシングオイルは、長期使用に向いていないため、1レースに付き1回オイル交換をするようです。

4ストロークオイル&フィルター交換の投稿はこちら

・2ストロークはエンジンオイル交換が不要?

上記のBでも述べた通り、2ストオイルは燃焼して白煙として排出されるため、エンジンオイル交換は不要です。4ストと違ってエンジンオイルが入っているオイルパンがないですから、交換のしようが無いです。

D. マフラーとチャンバーの違い

マフラー(エキゾーストパイプ&サイレンサー)とは、内燃機関において排気ガスが外部へ排出される際に発生する排気音や、排気管に空気が吸い込まれる吸気音を低減すると共に、エンジンの特性を調整するものです。4ストでは吸気バルブから空気を取り込み、排気バルブが開いて排気ガスを外に出します。対して、2ストは吸・排気のバルブが存在しません。そのため2ストのチャンバーが、排気ガスを外に出しながらも未燃焼のガスを膨張室から燃焼室へ送り返し、圧縮や爆発のパワーに変えています。4ストのマフラーと2ストのチャンバーは、異なった方法で吸排気を行い、エンジンの特性を引き出していると言えます。

2ストのチャンバーの仕組み(Wikipediaより引用)

②4ストロークと2ストロークのメリット・デメリット

・4ストのメリット

*燃費が良い

*排ガスが綺麗、環境性に優れている

*耐久性に優れている

*低回転〜高回転まで回せる、パワーバンドが広い

・4ストのデメリット

*エンジン部品数が多く、重量が重い

*エンジンオイル・オイルフィルター交換が必要

*同じ排気量の2ストに比べ、最大出力&パワーは劣る

*値段が高い

・2ストのメリット

*エンジンの構造がシンプルなので、重量が軽い

*エンジンオイル交換不要

*同じ排気量の4ストに比べて、最大出力&パワーに勝る

*部品点数が少ないので、値段が安く、整備メンテも楽

・2ストのデメリット

*燃費が悪い

*白煙が上がり、排気ガス中の有害物質が多い。

*耐久性に劣る

*パワーバンドが狭い

*2ストオイル分のコストがかかる

4スト、2ストそれぞれの長所・短所がありますね。現在日本では市販車2ストを生産していない為、2ストを購入する場合は、中古車一択になります。それでも2ストにメリットを感じて、今こそ2ストに乗ってみたいライダーさんがいることは確かです。あの瞬発力・加速力に虜になるのは気持ちはすごくわかります。

③中古市場で購入できる2ストローク車6選

中古車で購入できる2スト車はありますが、年々減ってきています。そして球数が少なってきている今、値段が上がってきています。その中でも人気の2スト中古車(オフロード車除く)をいくつか紹介していきたいと思います。

1. ホンダ・NSR250R

ロードレース世界選手権250ccで、1985・1986年チャンピオンとなったマシンのレプリカモデルとして、販売されたのがNSR250R。このNSR250Rからレーサーレプリカという言葉が生まれ一世を風靡しました。1986年販売のMC16から始まり、1993年販売のMC28で惜しまれつつも販売終了。現在でも2ストレプリカの雄「NSR250R」は絶大な人気を誇り、中古価格は高騰し続けています。

エンジン形式(MC28型)水冷2スト・90度V型2気筒クランクケースリードバルブ
排気量249 cc
乾燥重量137 kg
最高出力40pc/9000rpm
最大トルク3.3kgf・m/8500rpm
販売期間1986〜1993年
ロスマンズカラーのNSR250R

2. ヤマハ・R1-Z

1980年に登場したRD250、1983〜1989年のRD250Rの系譜を受け継ぎ、ヤマハ・2ストロークスポーツモデル最後を飾ったのがR1-Z(アールワンジィと発音)でした。1990年台のレーサーレプリカ全盛期、あえてネイキッドモデルとしてリリースされたR1-Zは、管理人の友人が関西から九州に乗ってきたぐらい、街中やツーリングにも扱いやすい2ストスポーツです。

エンジン形式(1993年モデル)水冷2スト・並列2気筒クランクケースリードバルブ
排気量249 cc
乾燥重量134 kg
最高出力40pc/8500rpm
最大トルク3.4kg-m/7500rpm
販売期間1990〜1998年

3. カワサキ・500SSマッハⅢ

1960年代後半、当時はマイナーだったカワサキが、1969年に北米市場向けに投入したのが500SSでした。遅れて同年日本でも販売され、あまりの速さから「カミナリ・マッパ」と言われたのは有名な話です。兄弟車の750SSマッハⅣとともに、現在の中古市場でも爆発的な人気を誇り、市場価格が爆上がりしている2スト3気筒バイクです。

エンジン形式(1975年モデル)空冷2スト・並列3気筒ピストンバルブ
排気量498 cc
乾燥重量174 kg
最高出力60pc/7500rpm
最大トルク5.8kg-m/7000rpm
販売期間1969〜1977年
右三本出しサイレンサーがかっこいいですね

4. スズキ・RG400Γ

1976年から1982年にかけて世界ロードレース選手権(WGP)GP500クラスでタイトルを獲得したSUZUKI。そのGPマシンのレーサーレプリカバージョン400ccがRG400Γ(ガンマ)。エンジン形式はスクウエアフォア、吸気方式はロータリーバルブでした。4本出しのマフラー、軽量ながら最高出力59ccのワークスマシーンは、当時多くのライダーを魅了しました。

エンジン形式(1986年モデル)水冷2スト・スクウエア4気筒ロータリーピストンリードバルブ 
排気量397 cc
乾燥重量158 kg
最高出力59pc/9000rpm
最大トルク4.9kg-m/8500rpm
販売期間1983〜1986年

5. スズキ・GT380

通称「サンパチ」の愛称で親しまれた、SUZUKIの並列3気筒・2ストスポーツモデルがGT380。ライバルだった、カワサキのマッハ3やKH400 と比較しても、低速トルクが太くて乗りやすいことから、長く人気を保った車種でした。ラムエアシステム(冷却装置)がもたらす角ばったシリンダーヘッドなどの造形は、スズキ・ネイキッドファンには堪らないらしく、現在でも非常に高値で取引されています。

エンジン形式(1972年モデル)空冷2スト・並列3気筒ピストンバルブ 
排気量371 cc
乾燥重量169 kg
最高出力38pc/7500rpm
最大トルク3.8kg-m/6500rpm
販売期間1972〜1978年
ウエマツさんで購入したくっきーさんのサンパチ

6. ベスパ・PX125

管理人の乗っているLMLスターデラックスとほぼ同じ作りですが、イタリアンブランド・ピアジオのベスパPX125は2ストのスクーターがあります。(現行モデルは4ストのみ)ハンドシフト4速切り替えは乗っていて楽しいですし、なんせビジュアルが素晴らしいですね。

エンジン形式(1972年モデル)空冷2スト・単気筒ロータリーバルブ
排気量123 cc
乾燥重量120 kg
最高出力6.5pc/6000rpm
最大トルク9.5N・m/4250rpm
販売期間不明

④バイク以外で2ストロークエンジンは使われている?

最後に、2ストローク(2サイクル)エンジンが使われている機械が、バイク以外に何があるか調べてみました。

・自動車

・船舶

・草刈機・芝刈機

・耕運機・トラクター

・チェーンソー

・エンジンポンプ

確かに、草刈機やチェーンソーは混合油を燃料としているので、2ストロークエンジンです。そして草刈機など手に持って使う機械は、2ストの方が4ストより軽いので採用されている事実が納得できますね。

2ストロークエンジンを学んで思うこと

今回自分が実際に2スト車LMLスターデラックスに乗っているにも関わらず、あまり2ストの中身を知らないなと感じた所から、「2ストロークエンジン」について色々調べてみました。2ストだけでなく4ストについても深く見識を深めることもできました。そして内燃機関としての2ストエンジンがあり、排ガス規制が年々厳しくなる中、4ストエンジンが進化していったのだということも。また何気なく継ぎ足したり・交換したりしていたエンジンオイルが、エンジンの中で果たしている役割を詳しく知ることができて良かったと思います。これからも、こういったバイクの仕組みや内燃機関に関わる投稿を続けていこうと考えていますので、ご購読よろしくお願いします。

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  1. ピンバック:エンジンオイルの役割からオイル交換 - Imported motorcycle Lovers

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