なぜデニムは経年変化(色落ち)するのか?

デニムラバーの皆様、今年の夏は異常に暑いですが、今日も元気にデニム履いてますか?筆者は暑くてもデニムを毎日履いております。夏はデニムの経年変化が進む最高のシーズンです。洗わないで毎日履いているので、汗をかいて臭いが気になるときは、天日干しをしてなんとか凌いでおります。そんな履いて楽しめるデニムですが、なぜデニムが経年変化するのかご存知でしょうか?筆者は不覚ながらもあまり理解していなかったので、デニムとは一体どういったものなのか、そしてデニムが経年変化(色落ち)するメカニズムを調べてみました。と言うことで今回は、デニムのことを深く掘り下げていきたいと思います。

最近様々なメディアで「デニム」というワードが頻発しており、デニムで無いモノまで「デニム」と呼ばれていることがあります。そこでまずは本来のデニムとは何なのかを、きっちりと勉強していきたいと思います。

まず生地を構成していくにあたって、「編み」と「織り」の2通りの方法があります。「編み」は、1本の糸で編んでいく手法で、ニットやTシャツは編みで作られます。それに対して「織り」は、経糸(たていと)と緯糸(よこいと)の2本の糸で生地を作っていくやり方で、デニムやチノパンはこの手法です。

そして「デニム」は、インディゴ染料で染められた縦糸と染色をしていない白い糸(生成り)の緯糸で織られた生地のことをいいます。つまり、表の生地がインディゴ、裏の生地が白の生地のみがデニムです。対して、表生地がインディゴ&裏生地もインディゴの生地で構成される衣類は、デニムではなくインディゴ製品なのです。厳密に言うとブラックデニムも、本来の意味からするとデニムではありません。

デニムを染色する方法は、次の2つがあります

日本で古くから行われてきた「藍染め」は、藍という植物を使った染色方法です。藍染めに使われる品種は、ダデアイやアイタデと言われるタデ科イヌダデ属の単年植物。藍は日本最古の天然染料で、1500年以上の歴史があります。藍は緑色の植物で、酸化すると青色になります。この青色が、藍に含まれているインディゴの色なのです。しかしながら藍染めは、不純物が多く、コストと労力がかかる為、昨今のデニム製品にはほとんど使われなくなりました。

藍の葉

手間のかかる藍染めに変わり、現在主流となっているのがインディゴ染めです。1900年頃、石油を原料とした合成インディゴが開発され、染料として使用されるようになりました。藍染めとは異なり、インディゴ染めは不純物が無い為に大変綺麗に染め上げる事ができます。そしてコストも抑えられるため、合成インディゴはデニムの染料としては欠かせない存在になりました。

インディゴは糸を染める染料なのですが、主にデニムの縦糸に使われている染色方法は3つあります。それらを順番に見ていこうと思います。

藍の葉による天然インディゴが入った瓶に、束ねてかせ状に輪にした糸全体を浸け、引き上げて絞り、空気にさらして酸化させて青く染める、という工程を繰り返す染色方法です。合成インディゴを使ったロープ染色に比べると、芯まで染まり、色落ちしにくくなると言われております。現在はデニムに天然インディゴを使うことがほとんどない為、枷染めは見かけなくなりました。

ロープ状に束ねた糸をインディゴ溶液(緑)の槽に端から順に浸けていき、引き上げてローラーで絞り、空気にさらして酸化させることで青く染める、という工程を繰り返す染色方法です。ロープ染色は表面から徐々に染まっていくので、「中白」と呼ばれる糸の芯まで染まらない状態が生まれます。このため、ジーンズの色落ちと言われる現象が起こるのです。昨今の日本デニムには、このロープ染色が使われることが大半です。何回も染色できるので、24回染めといった非常に濃いデニムも作れるのがこの手法です。

ロープ染色のように、ロープ状に糸を束ねるのではなく、シート状(板状)に糸を広げて染色します。巻き直しをしなくて良いので大量に染色できます。薄く粗く染まるのが特徴ですが、ムラが出やすいので日本ではほとんど採用されることはありません。逆に、ヨーロッパでの一般的な染色方法は、このシート染色です。

デニムは一般的に「綾織り」と言う手法で織られています。綾織りとは、三原組織のうちの一つであり、経糸を2本もしくは3本浮かせ、1本をくぐらせる組織を一巡りとする織り方であり、別名ツイルと呼ばれます。平織りに比べ組織点が少なく、やや摩擦に弱いが光沢に富んでいます。厚地の生地を織ることができ、さらに柔軟性やシワのよりにくさを持つという特徴があります。

綾織の組織

綾織の表に見える畝が右上がりになってるのが右綾です。右綾は、表に沢山の見えるインディゴのタテ糸が膨らんで見えることによるインディゴ色の濃さと柔らかさです。世に出ている多くのデニムはこの右織で編まれています。対して、左綾は綾の畝が左上がりになる織り方で、右綾と比べてタテ糸が緩まないので、畝が立って締まった顔になります。

右綾と左綾の違いは、使い込んでいくと、色落ちの仕方ではっきり分かります。右織は生地の凹凸が強い状態で維持され、表面のみ色落ちする「点落ち」が特徴です。左織は生地に凸凹が少なく、裏糸部分が表に出てきやすくなり「線落ち」という色落ちをします。全てのデニムがそうではないのですがリーバイスは右綾、リーは左綾が多いと言われています。中には、右織と左織の両方の生地を使っているデニムもあるようです。

デニム生地の厚さを表す単位としてよく出てくるオンス(oz)。オンスはアメリカで使われるヤード・ポンド法の単位です。デニムに使われるオンスは、1平方ヤード辺りの重さで表されており、オンスの数が大きいほど重くなります。ちなみに1ヤード=91.44cm、1オンスは28.35gです。デニム14オンスは1平方ヤード(約90cm四方)で約370g(14×28.35g)の重さを持つデニム生地ということになります。

アイアンハートの21ozデニム

前置きが長くなりましたが、「デニムはなぜ経年変化するのか?」という本題に入っていきたいと思います。❶章ではデニムは、縦糸がインディゴ染め、緯糸が生成り(白)で構成されていると紹介しました。また❸章では、昨今のデニムはロープ染色を用いるので、糸の芯部分が染まっていない、つまり白色だと述べました。デニムに使われる糸は自然由来のコットンで作られている為、履くことによる摩擦や洗濯することによって、表面の青色の繊維が削られていきます。その際、白い糸が表に出てくることによって、青と白のグラデーションが生まれてきます。この現象がデニムの経年変化(色落ち)なのです。特に好まれる経年変化はヒゲやハチノスと呼ばれています。

デニムを履いて座ったりしゃがんだりすると、太ももの辺りにシワができます。シワになった凸の部分が手や衣服などで擦れ、色が落ちていくという訳です。「ヒゲ」とは、言葉の通り動物のヒゲのように色落ちが現れることから呼ばれています。ヒゲを綺麗に出すためには、ジーンズをできるだけ履いてアタリを出すことです。

ジーンズを穿くと、膝の裏にもシワができます。すると、膝の裏の部分に8の字に現れます。このアタリが蜂の巣に似ていることから、「ハチノス」と呼ばれるようになりました。太めのジーンズよりも細めの方が、膝にテンションがかかりやすいのでハチノスが出やすいとされています。

デニムをよりカッコ良くエイジングさせたいなら、履き始めてから半年くらいは洗濯せずに履くことをオススメします。汗や臭いが気になるかもしれませんが、洗濯無しで履くことによりアタリが出やすくなります。夏場汗をかいて、臭いや湿りが気になる場合は、天日干しをするか洗濯しないで乾燥機にかけることで、何とか乗り切れると思いますので、チャレンジしてみましょう。

❻デニムのおすすめの洗い方 

最後にデニムの洗い方について書いていきます。洗濯機で洗ってしまうと、せっかく半年間かけて作ったアタリが消えてしまう可能性があるので、手洗いを推奨します。まずはバスタブにぬるま湯(30度くらい)をはり、裏返しにしたジーンズを徐々につけていきます。手もみしてほぐしてくと、デニムが水に馴染んで柔らかくなってきます。水が濁ってくる場合は、水を入れ替えてもOKです。10分くらい浸したら完了です。汚れが気になる方は、ジーンズ用洗剤を使用しましょう。

↓ウエアハウスが監修したデニム用洗剤

続きましてデニムが含んでいる水分を、乾いたタオルで拭き取っていきます。ある程度水気が取れたらハンガー等で吊るして、20分くらい天日干しして下さい。その後、デニムを表返しにして濡れたまま一度履いて下さい。しゃがんだりして癖付けをしていきましょう。最後にデニムを脱いで、もう一度ハンガー等に吊るして自然乾燥させたら、デニムの洗濯は完了です。

今回は、「デニムとは一体どういったものなのか」というテーマから、デニムの経年変化(色落ち)&洗い方までを紹介させて頂きました。革ジャンと同じように、着れば着るほど変化していくデニムは、生き物のようで本当に面白いです。そしてデニムのメカニズムを知ることによって、よりデニムが好きになった自分がいました。今後もお気に入りのデニムをガンガン履いて、素敵な経年変化を楽しんでいきたいと思っています。ここまでご購読ありがとうございました。

↓TCBジーンズ50S は5ヶ月目に入り、中々いい感じにエイジングしてきました。来月一度洗濯しようと思っています。

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