ライダーの皆様、レザーはお好きですか?そしてレザーのライダースは持っていますか?最近よく見ているYoutubeが、バイク系ではなく、「モヒカン小川(*)のレザーチャンネル」になっている管理人Yoneです(笑)バイクに乗り始めてから何かしらレザーアイテムを身につけていますが、そこまでレザーラバーではありませんでした。しかしカフェレーサーに乗り始めてから、ずっと欲しかったルイスレザーズを先月注文したのもあって(1年以上待ち)、ここ最近ライダース熱がヒートアップしてきました。上質な革を纏ってバイクに乗りたいと思って調べているうちに、レザーの素晴らしさや奥深さに虜になってきました。ルイスが届くのを1年以上待てないのもありますが、今年の秋冬を共にする素敵なライダースを見つけたいと考えています。ということで今回は、前半はレザーライダースの種類や革のことについて掘り下げていきたいと思っています。そして後半は、気になっているライダースをいくつか紹介していきます。レザーライダースに興味のある方は、是非ご購読ください。
(*)モヒカン小川:雑誌Lightningの名物編集長。50着以上の革ジャンを所有し、撮影で袖を通した革ジャンはなんと1000着を超えるとか。小川氏は、その革に対する熱い情熱と深い知識から “革の伝道師” や “レザープロフェッサー” と呼ばれています。
1. ライダースとは
そもそもライダースジャケットとは何なのでしょうか?レザージャケットや革ジャンとは違うものでしょうか?ライダースとは、バイクに乗る人の為に作られたジャケットです。バイクの乗るために、着丈は短め、腕は長めに作られています。またライダースは防風の為にレザー素材を使う事が多く、袖口からも風が入らないような作りになっています。街中で着るにはハードに見えることもありますが、バイクを乗る為に最適なウエアがライダースです。
ライダースは、大きく分けるとシングルライダースとダブルライダースがあります。スーツのシングルとダブルと一緒の意味合いですね。ルイスレザーズで言うと、ドミネーターがシングルで、サイクロンやライトニングがダブルです。
2.アメジャンとロンジャン
現在流通しているライダースの形を大きく分けると下記の2つになると思います。
A. アメジャン
アメリカンライダースジャケットの事。アメジャンは、ハンドルの位置が高いアメリカンバイクに乗ることに適したライダースです。ルーツはワークウエアからスタートしているので、ゆったり着れる印象がアメジャンにはありますね。アメジャンの特徴は以下の通りです。
①フロントにあるバックル付きのベルト②袖の付け根の背中側のリブ③短い着丈④ゆったりとした身幅と腕周り
代表的なブランドは、SchottやBUCO(リアルマッコイズが復刻)です。
B. ロンジャン
ロンドン発祥のライダースジャケットの事。元々はロッカーズが好んだカフェレーサーなどの、前傾姿勢のバイクに乗ることに適したライダースです。ロンジャンのルーツはテーラー(仕立て)なので、体のラインに沿ったピタッと着るスタイルになっています。ロンジャンの特徴は以下の通りです。
①サイドにアジャスタータイプのベルト②袖の付け根にリブがない③着丈がアメジャンより長い④タイトなシルエット
代表的なブランドは、ルイスレザーズや666です。
☆あくまでアメジャンやロンジャンはルーツやスタイルの話なので、最近では双方の良いところを取り入れて新しい形のライダースを作っているブランドは数多あります。
3. 革の種類
第3章ではライダースに使われている革の種類について、触れていきたいと思います。ライダース選びにおいて、何の動物の革を使っているのかは非常に重要です。というのも、革の種類によって着心地・スタイル・色など、それぞれ特徴があります。早速、馬革から見ていきましょう。
❶馬革
英語ではHORSEHIDE(ホースハイド)。馬革は、牛革に比べると厚みが取れない&繊維質が荒い革になります。1930〜1940年代に車が発達し普及していく過程の中で、馬車に使われていた馬が必要とされなくなり、馬革のレザージャケットがこの年代に多く作られた言われています。現在は、1930〜1940年代のライダースの形を復刻しているモデルが多いことから、ホースハイドのライダースを扱っているブランドが多数あります。
馬革は、重厚感がありながら柔らかくツヤがあるのが特徴です。また鞣し方にもよりますが、そのなめらかさと独特の風合いから、エイジング向きの革ともいえます。私は、牛革より軽くて着やすい馬革が大好きです。
・HIDE(ハイド)とは:大きな動物の意味。ホースハイドとは、成馬の胴体部分から取れる革のことです。
・コードバン:馬のお尻部分の革で、皮膚組織の内部にある厚さわずか2mm程度の「コードバン層」と呼ばれる部分だけを削り出したものがコードバンの革となります。大変希少な部位であることから、”革のダイヤモンド” と言われています。ライダースよりは、財布や靴など革の面積が少ない物に使われます。
❷牛革
レザーライダースといえば牛革と言われるくらい、ポピュラーな革が牛です。牛革は年齢や性別によって呼び方が違ってきます。下記にて順番に見ていきましょう。
・ハラコ:牛の胎児の皮
・カーフ:生後6ヶ月以内の子牛の革
・キップ:生後6ヶ月〜2年くらいの牛の革
・ステアハイド:生後2年以上の去勢済みの雄牛の革
・カウハイド:生後2年以上の雌牛の革
・ブルハイド:生後2年以上の去勢されていない雄牛の革
1950年代以降になると、牛革のライダースが増えてきます。特に牛肉をたくさん食べる国では、牛革は比較的安く手に入る為、牛革のライダースの製造・流通量が増えました。
ライダースジャケットの素材として最も使用されている牛革は、ステアハイドやカウハイドが多く、繊維組織の密度にバラつきが少なく厚みが比較的均一で、強度に加えて耐久性に優れているのが特徴です。
❸羊革
馬や牛がハイド(大きな動物)と呼ばれますが、羊は小さい動物なのでシープスキンと称されます。前述の牛や馬に比べて繊維が緩い為、柔らかく保温性があります。とても着やすいので、革ジャン初心者や女性にオススメです。ちなみに生後1年以内の子羊の革は、ラムスキンと呼ばれます。
イギリスは羊がたくさんいる&食べるので、ロンジャンにはシープスキンがよく使われいます。
❹山羊革
山羊革は厚みは比較的薄いが、強度に優れ、きめ細やかな繊維質を持つため、レザージャケットに多く使われています。山羊革レザージャケットの代表格がアメリカ空軍航空部隊で使用されてていたG-1です。成長した山羊はゴートスキン、子供の山羊はキッドスキンと呼ばれます。
❺鹿革
細くて粗い繊維構造を持ち、非常に柔軟で着心地が良いのが鹿革の特徴です。鹿は野生動物の為、供給量が少なく、傷が多い革とされています。英語ではディアスキンと呼ばれており、シープスキンと並んで、革ジャン初心者や女性にオススメです。
鹿革の中には、ヘラジカから作られる「エルクスキン」、表面をサンドペーパーで擦って起毛させた「バックスキン」、鱈の脂を使って鞣し加工した「セーム革」などがあります。
4. 鞣しとは?茶芯とは?
・鞣しとは?
革の原料である生の動物の皮は、時間が経つと腐ってしまいます。この皮の腐食を防ぐための処理のことを、鞣し(なめし)と言います。もう少し詳しく説明すると、鞣しには革の乾燥による硬化と腐敗を防ぐ目的があり、皮の主成分であるタンパク質やコラーゲン分子を化学的に結合させて、皮を安定化させる為の処理を施します。
つまり鞣しによって、不安定な「皮」から安定している「革」になり、それは我々の生活に欠かすことのできない素材になります。
・鞣しの工程
①水漬け
動物の原皮は、腐らないように塩を含ませて輸送されます。この塩や血液などがこびりついた原皮を、水などに浸して生皮の状態に戻す工程を水漬けと言います。
②脱毛
皮をさらに加工しやすくする為に、石灰液と硫化ナトリウムに浸して繊維をほぐし柔らかくしていきます。石灰石を皮に浸すことによって毛穴が膨張して脱毛が促され、皮に柔軟性を与えることができます。
③鞣し(なめし)
②の工程を終えた皮からさらに不要なタンパク質や脂肪を取り除きます。その皮に鞣し剤と呼ばれる薬品を浸透させ、内部繊維の結合を強くして皮に耐熱性と耐久性を持たせます。鞣しの種類には下記の3種類です。
A. クロム鞣し
塩基性硫酸クロムと呼ばれる化学薬品を使った鞣し製法のことで、現代において主流の鞣し製法となります。クロム鞣しは、鞣し時間が短く工程管理がしやすいのが特徴です。そして仕上がった革は、滑らかな美しい銀面が特徴で、耐熱性、発色の良さ、しなやかさに優れています。
B. ベジタブルタンニン鞣し(渋鞣し)
ベジタブルタンニン鞣しは、もっとも歴史のある鞣し方法で、植物の樹皮などから採取したタンニンが鞣し剤として使われています。皮を濃度の薄いタンニン液から濃度の濃いタンニン液に時間をかけて浸していくという伝統的な製法は、他の製法に比べて2倍〜4倍の時間と費用がかかることでも知られています。ベジタブルタンニン鞣しは通称ベジタンと呼ばれ、革本来の表情や味、そしてエイジングを楽しめるので、多くのレザーファンから愛されています。
C. コンビ鞣し
クロム鞣しとベジタブルタンニン鞣しの両方を行う製法。それぞれのメリットを生かしながら、デメリットを補う利点があるのが、コンビ鞣しの特徴です。
④染色
染色工程は大きく分けて2つの方法があります。
・顔料:水に溶けない塗料を吹き付け革表皮にコーティングする手法。革の表情は変わりにくいが摩擦には強く、水もある程度ならはじきます。着込む程割れていく経年劣化が楽しめます。
・染料:水に溶ける性質があり、革の中に染み込んで繊維を染め上げる手法。塗膜ではないので、光沢があり革の表情は変わりやすい特徴があります。摩擦と水には弱いですが、擦れていく経年劣化が楽しめます。
また染色には革全体を染める「芯通し」と、表面だけを染める「表面染色」があり、どちらの染色をするかによって革の風合いや表情が変わってきます。
⑤加脂
乾燥して硬くなった革に生油や合成油脂を加えて、揉んで柔らかくする工程を加脂といいます。
⑥乾燥
仕上げ前に革を自然乾燥させます。
⑦仕上げ
仕上げでは、塗装による艶出しや型押しなどの加工が施されます。これで鞣しの工程が全て終了です。
・茶芯とは?
革ジャンの醍醐味と言われる「茶芯」。ヴィンテージレザーによく見られる、表面の黒がこそげ落ちて、下地の茶色が出てくる現象を「茶芯」と言います。最近のレザーブランドでは、茶芯レザーを謳ってリリースされているモノがあります。茶芯ライダースを着込めば着込む程、味が出て革の表情の変化(エイジング)を楽しむことができます。
5. 管理人オススメのレザーライダースブランド
自身がカフェレーサーに乗っているのもあり、ロンジャン系のレザーライダースを作るブランドがオススメです。前回の投稿でルイスレザーズを紹介したので、今回は管理人が注目しているジャパニーズブランドを3つ挙げていきたいと思います。
A. FINE CREEK LEATHERS、FINE CREEEK & CO
まず1つ目は革ジャン好きなら知っている人も多いファインクリークレザーズ。2017年、”馬革の可能性を追求する“というコンセプトの元、代表の山崎さんが立ち上げたレザーブランドです。良質な馬革茶芯にこだわり、東京の大田区の自社工房で革ジャンを作っている為、大量生産できないようです。ファインクリークの一番の魅力は、ヴィンテージラバーをも唸らせる、エイジングが楽しめることですね。最近は人気がありすぎて、1年以上待たないと手に入れられないモデルもあるとか。作りはアメカジよりと言われていますが、私的にはアメリカとイギリスの良いところを合わせて、繊細なジャパニーズレザーライダースを作っているように思っています。
またファインクリーク&コーという別ブランドでは、馬革だけでなく鹿革を使ったり、レザーズでは作らないデザインで制作したり、独創的な革ジャン作りをしています。
それではファインクリークが放つ、私のお勧めの革ジャンを2着紹介していきます。
・Leon The Nostar Custom
王道のダブルライダースをベースに、50〜70年代のディールをミックスさせ、理想のライダースに仕立て上げた「Leon The Nostar」。1.8mm厚のフルベジタブルタンニン鞣しホースハイドを用いており、芯通しで経年劣化が楽める革ジャンです。そのノースターから、肩のエポレットと腰のベルトをぶった斬ったモデルが「Leon The Nostar Custom」。モヒカン小川さんの提案を元に、切り口まで再現させているレオンカスタムは、遊び心満載で大好きなモデルです。
・RICHMOND
ライダースではないのですが、ファインクリークを代表するモデル「RICHMOND」。リーバイスが作った往年のデニムジャケットを、ファインクリークがレザーで作り込んだ珠玉の革ジャンです。1.2mm厚のフルベジタブルタンニン鞣し・アニリン仕上げのホースハイドを用いており、エイジングを楽しめる1品ですね。後ほどS66という大戦モデルバージョンもリリースされています。
B. Addict Clothes
2006年にヴィンテージモーターサイクルジャケットの専門店として代表の石嶋さんが立ち上げたアディクトクローズ。2010年よりオリジナルのレザージャケットを展開しています。アディクトクローズは、もともとUKモーターサイクルジャケットを数多く扱ってきたこともあり、良質なシープスキンを使ったUKライダースが主力。ルイスレザーズ愛好家の中には、アディクトのシープに乗り換える人がいる程、気軽に着れてエイジングも楽しめるジャパニーズ・レザーブランドです。
それではアディクトクローズが放つ、私のオススメの革ジャンを2着紹介していきます。
・AD-01
AD-01 は1960〜1970年代のイギリスで主流だった襟付きセンタージップのシングルライダース。ルイスで言うとコルセア型です。ベジタブルタンニン鞣し・顔料仕上げを施し、ブラックのシープスキンを採用しています。両サイドのハンドポケットのみのシンプルな見た目ではありますが、ジッパーを隠せるウエストベルトの存在が、UKライダースしている1着です。革はシープ以外にホースハイドも選択可能で、カラーも5色展開。
・ AD-02
AD-02は4つのウエストベルトバックルが象徴的なUKスタイルのダブルライダースです。ルイスで言うと391ライトニング型ですね。上述のAD-01同様にベジタブルタンニン鞣し・顔料仕上げを施し、1.3〜1.5mm厚のシープスキンを採用しているので、とにかく柔らかくて着やすいライダースです。シルエットもタイトフィット寄りになっており、カフェレーサーとマッチすること間違いなしです。革はホースハイドも選べるだけでなく、カラー展開も青や赤など5色から選べるようになっています。
C. Y’2 LEATHER
Y’2 LEATHERは大阪の自社工房で裁断や縫製を行う、創業25年の総合レザーブランドです。Y’2レザーが気になっている理由は、革にすごくこだわっているレザーブランドにも関わらず、他のブランドに比べてプライスがリーズナブル。Y’2レザーは、宣伝や広告にほとんどお金を使わないので、良い革ジャンを比較的安く提供できるようですね。
実は先日、某ヤフオクでY’2レザーの良さそうなシングルライダースの出品を見つけました。厚さ1mmのホースハイドで、晩夏〜秋のツーリングに活躍してくれそうなので狙っていました。誰も入札しなかったので、最安値で落札しました。
VINTAGE HORSE LIGHT SINGLE RIDERSと評された革ジャンは「PR-64」の別注モデルでした。この革ジャンの詳細については次回お伝えしたいと思います。
6. まとめと次回への展望
今回は、ライダースや革についてかなり深くまで掘り下げ、知ることができたのではないでしょうか。特に、動物の皮の状態から革ジャンとして販売されるまで、様々なプロセスやストーリーがあることに感動すら覚えました。これからはもっと革に愛情を持って接していきたいですね。後半は、最近気になっている日本レザーブランドについて紹介し、次に自分が手にするライダースはどこのブランドのモノが良いのか、色々シュミレーションできました。フライングぎみに、Y’2レザーのシングルライダースを購入してしまいましたが、全く後悔はありません。次回は、Y2レザー購入秘話からお目当てのライダースを見つける所まで、お届けできたらと思っています。ここまでご購読有難うございました。
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