ロケットカウルが美しいバイク5選+1

バイク乗りの皆様、寒い日々が続きますが、今日も元気にカフェレーサーに乗っていますでしょうか?トライアンフ・スラクストンRからBMW・R100RTに乗り換えて早いもので8ヶ月が経ちました。思えば2年半前、神戸のバイク量販店で出会ったシルバーアイスのスラクストンRから、私のカフェレーサー人生が始まりました。スラクストンRを購入することになったきっかけは、メーカーオプションである「ロケットカウル」仕様だった事に尽きます。実車を見て、そのフォルムに目を輝かせたのは今でも鮮明に覚えています。そして現在乗っているBMWもカフェレーサーなのですが、ロケットカウル仕様ではありません。今だにロケットカウル・レスを寂しく思うくらい、私は「ロケットカウル」を愛しています(笑)。憧れのベベル900SSやMH900e(共にドゥカティ)もロケットカウル仕様です。というわけで今回は、「ロケットカウルが美しいバイク5選+1」と題して6台のバイクを紹介していきたいと思います。但し、社外パーツではなくメーカー純正のロケットカウル仕様車に限らせて頂きます。

九州スラクストンMTGの一コマ

・ロケットカウルとは?

読者の皆様は、ロケットカウルと聞いてどんなバイクを想像されるでしょうか?いわゆる暴走族のバイクや、仮面ライダーが乗っていたバイクを想像される方もいることでしょう。またビキニカウルと混同されることがありますが、ロケットカウルはタンクの下まで伸びているのに対して、ビキニカウルはヘッドライト周りだけを覆っているものになります。

そもそもロケットカウルとは、1960~70年代にバイクレースに使用していたカウルがルーツであると言われています。確かにMHR(マイクヘルウッドレプリカ)はカウル付きのレーサーでした。それが1970年代の市販車に取り付けられ、ロケットカウルと呼ばれるように。ロンドンのエースカフェを拠点にムーブメントを起こしたカフェレーサーにも、ロケットカウル仕様のバイクがありました。

しかしながらロケットカウルでは空力性能があまり向上しないので、レーサーのバイクには、現在のスーパースポーツについているようなフロントカウルに進化していきました。

それではこれから、この20年で販売されたメーカー仕様のロケットカウルが美しいバイクを紹介していこうと思います。

1. トライアンフ・スラクストン

まず最初に紹介するのは、筆者も昨年まで所有していたトライアンフのスラクストン。現在ファイナルエディションの受注が終わっており、今後はレギュラーモデルでの販売はしないとのこと。同じエンジンやプラットホームを持つスピードツインは継続するようなのですが、スラクストンがラインナップから無くなってしまうのは寂しいですね。

スラクストンのファイナルエディション(バージントライアンフHPより)

・スラクストンの誕生

スラクストンの名前は、イギリス・ハンプシャー州にあるスラクストン・サーキットに由来します。1964年、ボンネビルT120をチューニングしたマシンで、スクラクストン500マイルレースを走り優勝を飾ります。その結果、スラクストンの称号を得ることとなり、後のマン島TTでも大活躍しました。そしてトライアンフから少量でしたが、スラクストンは市販化されました。

スラクストン500を制したベロセット・スクラクストン(バージントライアンフHPより)

・スラクストンの復活

そしてスラクストン誕生から40年以上が経ち、2005年にスラクストンが復活を果たします。ベースはボンネビルで、当時は空冷・キャブレーター仕様でした。排気量は790cc→865ccへボアアップし、ハイカムなどの採用、吸排気系強化によって最高出力は62psから70psへ向上。また、前傾ポジションのセパレートハンドルとバックステップといったスポーティなライディングポジションだけでなく、フロントホイールを18インチから17インチへ小径化し、俊敏なハンドリング特性を与えられた高性能カフェレーサーでした。(ロケットカウルは純正オプションには無し)

空冷スラクストン900ロケットカウル仕様(Escape MotorcycleのHPより)

そして2016年には水冷インジェクション仕様、排気量は1200ccのスラクストンRがリリース。最高出力は97psを誇る270度クランクのパラツインエンジンは、高速やワインディングでもトルクフルなマシンでした。そしてこのスラクストンRからメーカーオプションでロケットカウルモデルが販売されることになります。

現行のスラクストン

スラクストンR発売から4年後の2020年、現行モデルのスラクストンRSがリリースされました。Rからの大きな変更点は、最高出力が8psアップし105psになったこと、そしてボディカーラーの変更といったところでしょうか。スラクストンはカスタムするところがない、いやむしろカスタムしない方がかっこいい、純正で完成されたカフェレーサーだと思います。そしてメーカー純正のロケットカウルがバイクを引き立たせてくれる、そんな素敵なブリティッシュ・モーターサイクルです。リミテッドとして発売された中では、Tonup Editionのカラーリングが最も私の好みでした。

中々見ることのないスラクストンRS・Tonup Edition

2. BMW・R nine T Racer

2台目に紹介するのは、BMWが誇るボクサーツイン搭載のカフェレーサー・R nine T Racer。残念ながら販売は2019年で終了している為、現在は中古車でしか購入できません。R nine Tも今あるメーカー在庫限りで終売のようで、R 12 nine Tという新しいモデルにチェンジしていくとのこと。しかしながら自分の中でR nine Tは、カフェというよりストリートファイター的なバイクなのです。純正BMWマシンの中で、唯一カフェレーサーしているのが、R nine T Racer。白ベースに青と赤のラインが入ったBMWワークスカラーのレーサーは、流線型のロケットカウルをまとったコクピット周りから、張り出した水平対向エンジン、ロングタンク、アクラボのマフラーまで、とにかく眼福なバイクです。3年前カフェレーサーを探していた時に、スラクストンとレーサーを最後までどちらにしようか迷ったバイクでもあります。

・R nine T Racerとは?

R nine T RacerはR nine Tの派生モデルとして2017年に発売。ロケットカウル、セパハン、専用のバックステップなど、カフェレーサースタイルの見た目ながら、最高出力110ps/7750rpmを誇る1169cc水冷2気筒エンジンは、トルクフルな走りを堪能させてくれます。ベースマシンであるR nine Tとは足回りやポジションが異なり、ロングタンク&セパハンなので、写真のようなタンクを抱えながら乗るライディング姿勢を強いられます。しかしながら、前述のスラクストンと比べても低重心であるため、意外にもコーナーリングが得意なマシンです。

Virgin BMWのページより

・地元の友人がRacerを購入

以前はスラクストンRSに乗っていた地元の友人が、もう一度ロケットカウルの美しい・走れるカフェレーサーに乗りたいということで、先日R nine T Racerを購入しました。アクラボのスリップオンマフラーなど、適度にカスタムされたRacerに、オールペンでブラックに塗装を施したようです。まだ地元に帰っていないので、そのマシンはまだ見ていないのですが、もう少し暖かくなったらBMWカフェ同士で一緒に走りたいと思っています。しかし黒のレーサーも渋くてカッコいいですね。

3. ドゥカティ・ポールスマート

3台目は、ドゥカティが誇るスポーツクラシックの名車・ポールスマート。正式名称はPaul Smart 100LEで、2016年に世界限定2000台で販売されました。モデル名になったポール・スマートは、1960年代から70年代にかけて活躍した英国人ライダーで、1972年のイモラ200マイルレースで、ドゥカティを駆って優勝。当時のイモラカラー(シルバー&エメラルドグリーン)が、ポールスマート1000LEのモチーフになりました。私は友人のポールスマートに試乗させてもらったことがあるのですが、かなり前傾ポジションで乗る人を選ぶマシンです。しかしながら、その美しいポールスマートのフォルムと、空冷Lツインエンジン&乾式クラッチの音色に虜になるイタリアンカフェレーサーです。

・ポールスマートのスペック

ドゥカティ・スポーツクラシックシリーズの長兄ポールスマートは、1気筒に2本のバルブを持つデュアルスパーク式の空冷L型2気筒デスモドロミックエンジンを搭載。最高出力は83ps/8,000rpmを誇る、走れるカフェレーサーです。また足回りは前後オーリンズのフルアジャスタブル・サスペンション、そしてシルバーのボディにエメラルドグリーンのトレリスフレームが映えます。バックステップ仕様だとかなり前傾ポジションなので、正直長距離ツーリングには向いていません。私の友人が乗るポールスマートにはZARDの2本だしフルエキが入っており、荒々しいエキゾーストサウンドに痺れましたね(下記写真左↓)。

友人のポールスマートと私のスラクストンR、ちょっと似てます

・ポールスマート・オーナーの集まり

そんな希少でエレガントなポールスマートですが、ポールスマートのオーナー達が集まって交流を図るチーム「Japan Paulsmart Culb」があります。私の友人も入会しており、なんとジャパンポールスマートクラブの会長は熊本在住の方でした。毎年行われるミーティング(コロナ禍の時は中止)では、ポールスマートが数十台集まるようです。JPC様よりお写真拝借させて頂きました。↓これだけのポールスマートが集まると圧巻という言葉しか思いつきませんね。

Japan Paulsmart Clubのページより引用

4. ドゥカティ・スポルト1000S

4台目は、ドゥカティ・スポーツクラシックの末弟でもあるスポルト1000S。ポールスマート発売から遅れること数年、スポルト1000、GT1000に続きリリースされたマシンですが、当時はあまり人気がなくセールスはイマイチだったようです。スポルト1000Sは終売してから、徐々に人気が出始めました。そして現在、日本での流量も少ないことや昨今のネオクラブームも手伝って、高値で取引されているようです。ポールスマートよりは少しロケットカウルがスリムになって、爪先から天辺までイタリアンなカフェレーサーです。

ドゥカティMTGで出会ったスポルト1000S

・スポルト1000Sのスペック

空冷L型2気筒デスモドロミックエンジンなどポールスマートと共通のパーツが多数使われていますが、湿式クラッチ&リアサス2本(オーリンズではない)になったところが、大きな変更点でしょうか。マフラーの取り回しも左右2本出しになっていますね。それでも前傾ポジションを強いられるのは、ポールもスポルト1000Sも一緒です。空冷DSエンジン搭載のカフェレーサーでワインディングを走ったら、最高に気持ち良いこと間違いなしです。

Virgin Ducatiのページより

・実はスポルト1000Sを買おうとしていました

昨年筆者はBMW・R100RTを購入する前に、スポルト1000S購入の一歩手前までいっていました。スポルト1000Sは圧倒的にレッドの出物が多いのですが、某バイク量販店でブラックのスポルトを見つけました。仕様はほぼノーマルでしたが、スポルトに乗りたい気持ちが強く、成約寸前までに。関東の店舗から熊本へ陸送費を含めた見積もりを出してもらったのですが、スラクストンRの下取り金額が予想よりだいぶ低かった為、購入を見送りました。しかし今でも夢に出てくるくらい、ブラックのスポルト1000Sに惚れ惚れしていましたね。

Virgin DucatiのHPより引用

5. MVアグスタ・スーパーベローチェ

最後に紹介するのは、イタリアの走る宝石 “MVアグスタ” から2019年にリリースされたスーパーベローチェ。今回選出した5台の中では唯一の3気筒で、おそらく最も速いバイクだと思います。前述の4台はカフェレーサーですが、スーパーベローチェはどちらかといえば、スーパースポーツかスポーツネイキッドの部類ではないでしょうか。しかしながら、1972年世界ロードレース選手権を制したMV500のデザインを踏襲したスーパーベローチェは、私の中では美しくて速いロケットカウルなバイクです。

YoungマシンのHPより引用

・スーパーベローチェのスペック

世界的にも珍しい逆回転クランク採用の798cc水冷3気筒エンジンに、トレリスフレームを採用したスーパーベローチェは、最高出力150ps/13,000rpmを誇ります。F3と同じプラットフォームを採用する為、サーキットでも十分楽しめるマシンです。筆者が以前乗っていたブルターレ・ドラッグスターRRも同じ3気筒エンジンでしたが、セパハン・フルカウルのスーパーベローチェの方が、ワインディングでも高速でもより軽快に走ることでしょう。そしてアグスタの3気筒は高回転型なので、レブリミット近くまでブン回して乗りたいマシンですね。

Motor-Fanのページより引用

・MVアグスタの中で唯一のネオレトロ

MVアグスタのバイクは「走る宝石」と言われるほど、走りに特化しています。そしてF3やF4などのスーパースポーツ、ブルターレやドラッグスターなどのスポーツネイキッドの外見はどれも、空力性能を重視した近未来的なデザインです。その中でも、スーパーベローチェだけは、往年のアゴスティーニ時代のデザインを踏襲しており、ネオレトロな出立ちです。単眼ライトで丸みを帯びたフロントカウルを見ていると、ロケットカウルにしか見えません。次にMVアグスタに乗れる機会があるなら、私は迷いなくスーパーベローチェを選びたいと思っています。

MV AGUSTA500(1967年ジャコモ・アゴスティーニ仕様)

番外編. ホンダ・ホーク11

ここまで輸入車のロケットカウルが美しいバイクを5台紹介してきましたが、国産のホンダにもホーク11というロケットカウルのバイクがあります。私の中で、ホンダがメーカー純正でロケットカウル付きのバイクを作ったことに、驚きしかありませんでした。しかしながら、ロケットカウル大好きな自分としては、ホーク11は頑張ったけどどこか足りない、惜しいと思っています。ですので、ここではホーク11をどう改善すれば、さらに良くなるかと検証していきます。ホンダの開発者の方、偉そうにすみません。

ホーク11(Webオートバイより)

・ホーク11のスペック

2022年に発売されたホーク11は、CRF1100Lアフリカツインやレブル1100、NT1100と同系の並列2気筒1,082ccエンジンに特徴的なFRP製のロケットカウルを採用したカフェレーサーです。最高出力は75ps/7,500rpmと現在のドゥカティやBMWと比べると非力かもしれません。しかしながら『速くない。でもすこし速い』というテーマで作られたホーク11は、ゆったりと大人のツーリングを楽しむモーターサイクルに仕上がっていると思います。

ロケットカウルとミラーのバランスは秀逸です(Webオートバイより)

・ホーク11のあっぱれな所

なんといっても流線型が美しいロケットカウル、そしてカウルに干渉しない左右の変則的なミラーに、あっぱれをあげたいです。またコクピット周りは、セパハンにシンプルな丸型液晶メーターとクラシックな佇まいに収まっています。最も称賛に値する点は、カフェレーサーでありながら販売価格を140万円以下に抑えているところでしょうか。

・ホーク11の残念なところ

一方、ホーク11の残念な所はなんといっても下半身です。シート周りとマフラーは、とてもカフェレーサーとは言えないデザインです。ここだけCB250のようで、残念です。少々高くなっても良いので、もっとカフェレーサーになるように作り込んで欲しかったですね。もう一つ付け加えると、アドベンチャーやアメリカンというプラットフォームではなく、独自のエンジンやフレームでリリースした方が良かったと思います。まあそうしたら、開発費が嵩み販売価格がもっと上がっていたであろうと予測できますが・・・。

下半身が少し残念でした(Web オートバイより)

それでもはじめから純正のロケットカウル車を作ることに挑戦した、ホンダにはあっぱれですね。今後モデルチェンジを繰り返しながら、ホーク11を煮詰めていって欲しいものです。売れないからって決して終売にしないで下さい、ホンダさん。

HONDA HAWK 11のページより

・結論;ロケットカウルはやっぱり美しい

今回の「ロケットカウルが美しいバイク5選+1」如何だったでしょうか?5台中3台がイタリアンバイクになってしまいましたが、やっぱりロケットカウルは美しいですね。他にもオススメのロケットカウルがあればぜひ教えて下さい。空力的に恩恵をほとんど受けないロケットカウルですが、これがあるだけでバイクのカッコ良さが数段アップします。こんなポストを書いていると、私もBMWにロケットカウルを付けたくなってきました。フェンダーと合わせてロケットカウル化したら、一段とカッコいいカフェレーサーになりそうです。カスタムに凝り出したら、諭吉がたくさん旅立っていきそうです(汗)。ここまで、ご購読有難うございました。

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