ライダーの皆様、いつも燃料を満タンにして走っておられますか?前回は「バイクの燃費を向上させるには?」というテーマで投稿させて頂きました。そもそも燃費とは、”1Lの燃料でどこまで走行できるかを表す基準値” と解釈されています。バイクに使う燃料とはもちろんガソリンのことですね。それではガソリンについて、どこまでライダーの皆さんが知っているでしょうか?例えばどうやってガソリンは生成されているか、税金はどれくらいかかっているのか等、実は知らないことが沢山あるのではと思っています。
そこで今回は、危険物取扱乙4種(*)を持ち、前職である燃料生成プロジェクトに携わっていた管理人が、石油〜ガソリンについて、ぜひ知っておくべき5つのテーマを説明していきたいと思います。
*危険物取扱乙4種とは:危険物第4類の引火性液体(ガソリン・軽油・灯油・重油など)の取扱ができる資格。ガソリンスタンドの運営やタンクローリーの運転等には必須です。
1. 石油はどこからやってくる?
日本国内における石油の年間産出量は約520千kl。対して日本の年間石油輸入量は、173,044千klなので実に99.7%が輸入に頼っています。(2019年データ)それでは日本はどこの国から石油(原油)を輸入しているのでしょうか?
1位がサウジアラビアの34.1%、2位がUAE32.7%、3位がカタール9.3%、4位クェート8.9%とベスト4を全て中東勢が占め、全体の割合も89.2%が中東からの輸入です。日本の石油輸入が如何に中東に依存しているかよくわかるデータですね。このデータは2019年なので、2023年現在はロシアからの輸入はないものと思われます。
しかしながら興味深いデータがあります。実は日本の石油輸入量は2006年を境に、年々減少しているのです。ハイブリット車など燃費の優れたエコカーの台頭で日本国内の石油消費量が下がったのが、主な原因とされています。因みにエコカー減税が始まったのが、2009年。
2. 石油からガソリンはどうやって生成される?
中東諸国から日本へタンカーで運ばれてきた石油は、製油所にある原油タンクに移されます。ここで石油を加熱して液体から気体にし、冷やして再び液体にする「蒸留」という工程が行われます。液体になる温度の違いで様々な石油製品ができます。
35℃以下:LPガス
35〜180℃:ナフサ(ペットボトルなどの原料)・ガソリン
170〜250℃:ジェット燃料油・灯油
240〜350℃:軽油(トラック、中型までの船、小型重機などの燃料)
350℃以上:重油(大型タンカー、大型重機、ボイラーや発電機などの燃料)
3. ガソリンとは?
ガソリンはイギリス英語ではPetrol、アメリカ英語ではGasolineと言われ、沸点が30〜220℃の範囲にある石油製品の総称。ガソリンは主に炭素数4から10の炭化水素で構成されており、密度は783kg/m3であります。揮発性が強く、特異の臭気をもち、引火点は−40℃以下で、常温で火をつければガソリンは燃える危険物です。
ガソリン本来は水に溶けない無色の液体ですが、軽油や灯油と区別をするためにオレンジの着色料が付けられています。ガソリンの用途は99%が、自動車やバイクの燃料です。それ以外には、溶剤、塗料、ドライクリーニング(染み抜きなど)にも使用されています。
4. ハイオクとレギュラーは何が違う?
ハイオクとレギュラーは同じガソリンですが、オクタン価が違います。オクタン価とは”異常燃焼の起こしにくさ”を表す数値のことです。レギュラーよりオクタン価が高いハイオクは、異常燃焼を起こしにくく、ノッキング現象を起こしにくいガソリンです。別の言い方をすれば、高性能車の方が混合気の圧縮比が高く、シリンダー内の温度も圧縮比に伴い上昇するので、ノッキング現象が起きやすくなります→その為に、高性能車はハイオク指定になっています。逆に圧縮比が高くない、国産車・普通車は、ノッキング現象が起きにくいためにレギュラーガソリンを使用する方が良いと言うわけです。
レギュラーとハイオクの特徴を下記にまとめてみました。
ガソリンの種類 | オクタン価 | 適合車種 | 燃費の違い | 価格 |
ハイオク | 96以上 | 輸入車・高性能エンジン車 | 関係ない | ハイオクの方が10円高い |
レギュラー | 89以上 | 国産車(高性能は除く)・普通車 | 関係ない | レギュラーの方が10円安い |
ハイオクの方がレギュラーより10円高い理由は、オクタン価を高くするために添加剤を入れているからです。またハイオクは添加剤の分だけ燃えかすも多く出るのですが、燃えかすを洗浄するための洗浄剤も含まれています。
以上のことから、レギュラーとハイオクは別物と考えられます。輸入車・高性能エンジン車・スポーツタイプなどのハイオク指定車には、ハイオクガソリンを入れましょう。また国産車・普通車にはハイオクではなくレギュラーガゾリンを入れましょう。もし車種によってわからない場合は、ディーラーや代理店に問い合わせて下さい。
5. ガソリンにかかる税金
日々値段が変動するガソリンですが、その中でガソリンにかかる税金をご存知でしょうか?今回はよい機会だと思うので、同じく税金がかかる軽油・灯油と比較しながら見ていこうと思います。
ガソリン:ガソリン税53.8円+石油税2.8円=合計56.6円 / L
軽油:軽油引取税32.1円+石油税2.8円=合計34.9円 / L
灯油:石油税2.8円 / L
車に乗られる方は、軽油の方がガソリンより安いと思われているかもしれませんが、実際は税金が21.7円 / Lやすいのです。軽油は、トラックや軽貨物車など業務用が多いため、ガソリンより税金が安く設定されています。そして灯油は主に冬場の暖房に使うため、石油税以外かからなくなっています。
しかしながら、燃料にかかる税金はこれだけではありませんよね。はい、ここに消費税10%もかかります。本日のツーリング後、ドゥカティ848に入れたガソリンの明細は、
11.53 L × ハイオク152円 =1,753円+外税消費税175円=1,928円 でした。
ガソリン&石油税56.6円×11.53L=653円に消費税175円払っているので、税金の合計額は828円です。つまりガソリン代の43%は税金ということになります。我々は想像している以上に、燃料に税金を払っているのです。
そしてガソリン税&石油税という税金にも消費税をかけているので、これは完全なる「二重課税」と言われています。この二重課税を撤廃せよという議論はずっとされているのですが、無くなるどころか消費税が段々上がってきているので、増え続ける一方です。
一方ガソリンより安い税金の軽油ですが、道路を走らない船舶、重機、農耕器具などにも使われています。この場合軽油引取税はかかりません。つまり、ガソリンも含め道路を走る燃料にのみ税金をかけているということです。政府はガソリン税、軽油引取税は道路財源であると言っている訳ですね。
最後に
以上、石油・ガソリンについてぜひ知っておくべき5つのテーマを挙げさせてもらいました。ライダーの皆さんは、いくつ知っていましたか?特に、4のレギュラーとハイオクの違いと、5のガゾリンにかかる税金は絶対に覚えておいて下さい。そして現在、日本の人口減少・高齢化社会が進んでいく中、日本国として税金収入が減ってきています。近い将来、日本政府はガソリン税や軽油引取税の税率見直しをしてくるかもしれません。それと同時に、環境に悪いとされる燃料を使う内燃機関(エンジン車)が減少し、電気自動車や電動バイクにシフトしていく流れもあります。その時にガソリン税のような税金はどうなっていくのか、乗り物を愛する私としては非常に注目しています。