初心者でもわかる「バイクの電気の仕組み」

ライダーの皆様、バイクのメンテナンスはどうしていますか?ディーラーもしくはバイク屋さんに任せている方もいれば、自分で全部やるよという方もいるかと思います。私はエンジンオイル、プラグ、マフラー(但しフルエキはできない)交換くらいは自分でやるのですが、少し複雑な作業があるとバイク屋さんにお願いします。バイクの仕組みに関してはわからないこともあるのですが、特に「電気系」が苦手です。先日、BMW・R100RTがバッテリーをフル充電しても、走ってしばらくすると放電してしまうという問題が起こりました。教えてもらったことを色々試してみたのですが結局解決に至らず、バイク屋さんに預けて見てもらうことに。その際に、電気のどこをどうすれば直るというイメージがあまりできなかったので、バイク屋さんにも教えてもらいながら、「バイクの電気の仕組みについて調べてみました。あくまでバイク初心者の学びですが、興味のある方は読んで頂けると幸いです。

発電できないので、行き先で充電するR100RT

1. バイクおける電気の流れ

バイクのヘッドライトをつけるには電気が必要です。その電気はバッテリーからきます。バッテリーは電気を溜める役割をするもので、電気を作り出すことはできません。それでは、バイクがどうやって電気を生み出しているか、簡単に解説していきたいと思います。

ヘッドライトにメーターに電気は必要です

バイクはエンジンをかけると、クランクシャフトが回転します。そしてエンジン部分が回転すると、ジェネレーターという機構を利用して交流の電気が生み出されます。この発生した電気はレギュレーターという機構へ送られ、不安定な交流の電気から直流の電気へと変換し、一定の電圧に制御します。制御された電気はバッテリーへと送られ、そして蓄電されます。その電気を使ってヘッドライトやウインカーが光ります。これがバイクにおける大まかな電気の流れになります。

2. 発電の仕組み

それでは次に発電の仕組みについて触れていきたいと思います。発電方法は大きく分けて二つあります。古いバイクや一部の輸入車が採用しているダイナモ方式と、現在ではほとんどのバイクに採用されているオルタネーター方式があります。ここではオルタネーター方式について、少し深掘りしていきます。

ライダーの皆様は、電磁誘導という言葉をご存知ですか?小学校の理科の時間に習ったような気がしますよね。動線を渦巻状に巻いた「コイル」の先に電球をセットし、棒磁石をコイルの輪の中に出し入れすることによって電気が発生します。これを電磁誘導と呼びます。そして発生した電気のことを誘導電流と言います。この電磁誘導の原理を利用して作られたのがオルタネーターで、無数に巻かれたステーターコイルの外側を、磁石が仕込まれたフライホイールが回転し電気を生み出します。

3. 直流と交流

直流:プラスとマイナスの極性が決まっており、流れる電流の方向が一定。乾電池やバッテリーは直流電気を出しています。

交流:それに対して交流は、プラス・マイナスの極性が決まっておらず、一定の周期で電圧の大きさや電流の向きが変化します。そしてこの周期が1秒間に何回繰り返すかという事を周波数と言います。バイクで言えば、オルタネーターで発生する電気が交流です。身近なところでは家庭用のコンセントも交流で、ブラグをどちら向きに指しても使えます。電化製品は、交流の電気をACアダプターで直流に整流し、変圧して使用しています。バイクの場合も、蓄電ができ、電気機器などの端末を正常に作動させる為にも、発電された交流電気を直流へ変換する必要があります。

4. レギュレーターの役割

前の章でも述べたように、オルタネーターで発電する電気は交流で、エンジンの回転数によって電圧も不安定です。それらをバッテリーに蓄電するために、以下の2つの装置があります。

・レクチファイヤ:交流を直流に整流する装置

・レギュレーター:電圧を制御する装置

最近のほとんどのバイクは、この2つの機能を1つの部品で兼ね備えたものが主流となっており、レギュレーターレクチファイヤーと言うのですが、総称して「レギュレーター」と呼ばれています。

バイクのレギュレーターはこんな感じです

*バッテリーが新しいのにすぐバッテリーがあがってしまった場合は、真っ先にレギュレーターを疑ってみましょう。オルタネーターよりもレギュレーターの方が、一般的には壊れやすいとされています。

*ちなみに充電が正常に働いているかを判断するには、バッテリーターミナルにテスターをあて、エンジンを噴かし3000回転あたりで13〜14Vくらいになれば正常です。もしテスターがない場合は、ヘッドライトの光り方を見てみましょう。エンジンの回転を上げて吹かしている時に、アイドリング時よりヘッドライトがふわっと明るくなれば、充電が正常にできていると判断できます。また電圧を測るメーターも、メーカーから色々出ているのでバイクに取り付けておくのも一択です。

愛用しているバッテリーテスターです

5. 鉛バッテリーとリチウムイオンバッテリーの仕組と特徴

ほとんどのバイクは鉛バッテリーが採用されていますが、近年では軽くて安全なリチウムイオンバッテリーが台頭してきております。それでは2つのバッテリーの仕組や特徴を見ていきましょう。

<鉛バッテリー>

12Vの鉛バッテリーの場合、内部が6つの部屋で構成されています。その1つずつの部屋のことをセルと言います。そしてそのセルの中には陽極版と陰極版、つまりプラスとマイナスの電気を発生させる板が触れ合わないように数枚交互にセットされています。そこへ希硫酸という液体を入れることで、それぞれが化学反応を起こし電気が発生するという仕組みになっています。1つのセルで発生する電気は、陽極版の大きさに関わらず2Vとなっており、それが6つ集まることで12Vを生み出しています。

鉛バッテリーの中身

鉛バッテリーは大きく分けて2つの種類が存在します。バッテリー液を定期的に補充する開放タイプと、液の補充を必要としないMFタイプがあります。最近の車やバイクは後者のMFタイプ、つまりメンテナンスフリータイプを使用することが多いですね。

鉛バッテリーの寿命は一般的に2〜3年と言われていますが、これは使用状況によって大きく変わります。バッテリーはどんなに新しくても使わないと、自然放電によって電圧が下がってしまい、寿命も短くなってしまいます。特に寒さに非常に弱いため、冬場に乗らずに放置するのは、バッテリーとって大きなダメージとなります。冬から春になって久しぶりにバイクに乗ろうといった時に、エンジンがかからないというのはよくある話です。冬場や長時間のらない場合はターミナルを外し、乗る前にしっかりと充電しておくべきですね。古いバッテリーを使えるようにするためには、希硫酸を入れる必要がありますが、劇薬なので気をつけて入れて下さい。

<リチウムイオンバッテリー>

スマホ、パソコンはもちろん、バイクにまつわるものならばインカムやカメラまで、実はリチウムイオンバッテリーが動力源です。また車にはハイブリットカーから電気自動車まで、リチウムイオンバッテリーが沢山使われています。しかし、バイクにはなぜ昔ながらの鉛バッテリーが主流なのでしょうか。初期のリチウムイオンバッテリーは、発火・爆発・充電不良を起こしやすいといった問題が確かにあったため、バイク用リチウムイオンバッテリーに懐疑的なイメージを持つライダーさんが多いのかもしれません。

しかしリチウムイオンバッテリーにも。実は色々な種類があります。私の購入したBMWに装着されていた、SHORAIバッテリーは、リチウムフェライトを使用しており、この素材は発火や爆発の原因となる可燃性ガスを発生しません。徐々にではありますが、SHORAIバッテリーを使うライダーが増えています。

SHORAIのリチウムイオンバッテリーは、内部を4つ部屋(セル)で構成されています。1つのセルで発生する電気は3.3Vとなっており、それが4つで集まることで13.3Vを生み出しています。素材は鉛ではなく鉄でできており、希硫酸の代わりにリン酸を使います。

リチウムイオンバッテリーの利点はいくつかあります。鉛バッテリーに比べて、圧倒的に軽く小さく作れることです。それに加えて急速充電・大量放電も得意で、リン酸を使っているので安全性も高いのです。但し、小さく作っている分、容量自体は小さいので、防犯アラームなどエンジンを回してない時の電力消費や、暗電流が多いバイクは苦手です。加えて鉛バッテリーよりも価格が高いこともネックではありますが、今後バイクにも鉛に変わってリチウムイオンバッテリーが主流になるのではと、私は思っています。

SHORAIのバッテリーと充電器

6. BMW・R100RT改の問題点と解決策

さて一通りバイクの電気系を勉強したところで、R100RT改の「バッテリーが空になってしまう」問題点について検証していきます。古いOHVのBMWは、オルタネーターによる発電能力が低いバイクとして知られています。そこにSHORAIのLFX18A1-BS12という超軽量 (1.04kg)で容量の小さいバッテリーが付けられているので、走っている最中に蓄電できずバッテリーが空になって、バイクがストップしてしまいます。

修理中のBMW・R100RT

BMW・R100RTの電気系トラブル投稿は↓

・強化オルタネーターの導入

そこでまず発電能力を上げるために、BMW・OHVボクサー専用の強化オルタネーターを導入しました。最大出力450Wでアイドリングからしっかり発電し、充電不足の不安やストレスがなくなります←とネット販売(BMWメンテナンス)の説明文に書いてあったので信用するしかありません(笑)信じるものは救われるはずです!!

購入した強化オルターネーターを取り付けました

・レギュレーター

純正のダイオードボード(BMWのレクチファイヤー)を外し、能力の高いレギュレーターレクチファイヤーを入れました。これで発電した交流をしっかりと直流に整流してくれるはずです。

レギュレーターも一新しました

・バッテリーのグレードアップ

バッテリーに関しては、バイク屋さんに鉛バッテリーを勧められたのですが、ワンオフのバッテリーボックスが小さすぎるので鉛バッテリーが挿入できません。そこでSHORAIバッテリーのもう少し容量が大きいモデルに変えることにしました。購入したのは、LFX2A6-BS12で重量は1.38kgです。

これでしっかり発電&蓄電をして、バッテリーが空にならずにBMW・R100RT改でストレスなく走れることを願っています。

7. まとめ

今まで苦手だといって敬遠してきた「電気系」でしたが、こうやって少し勉強すると案外食わず嫌いだったのだなぁと思うようになりました。とは言っても自分で整備するのは、かなりハードルが高そうですが・・・、1つずつやれることをトライしていきます。バイクの仕組みを学ぶことは本当に面白いし、発明した人・デザインする人・作る人・メンテナンスする人にはリスペクトしかありません。こういった技術の結晶が集まって、バイクに楽しく乗れることに感謝します。BMW・R100RT改の修理はまだ現在進行形ですが、近いうちに元気に走れるようになったとレポートしたいと思っています。ここまでご購読ありがとうございました。

1件のコメント

  1. ピンバック:“46worksに憧れて” 購入して半年、BMW旧車カフェの現状 - Imported motorcycle Lovers

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