ライダーの皆様、革製品を身につけてバイクに乗っていますでしょうか?今回の話題は「革のエイジングとケア」について、色々深掘りしていこうと思います。一般的に衣類は、着込んだり時間が経ったりすると劣化してきます。言うなれば、新品を購入した時がピークでそのあとは品質や価値が落ちていくモノが多いとされています(ジーンズなど経年変化を楽しめる衣類もあります)。しかしながら革製品に関しては、着込むと味が出る、エイジングを楽しむなど、古くなっていくことを寧ろプラスに捉えて付き合っていくことができるのです。それは革が動物由来(合皮以外)であることから、動物の皮から革に生まれ変わっても生き続けているからだと言われています。筆者は以前から革製品は好きでしたが、ここ最近、より上質な革を求めて革と向き合うようになり、革に対する思いや考え方が変わってきました。そして良い革製品を手に入れ、育てていく過程の中で、革を正しくケアしてあげることが、革に対する敬礼、いや革を提供してくれた動物への恩返しだと考えるように。ということで「革のエイジングとケア」という2つのテーマについて、これから私なりに綴っていきたいと思います。
1. 上質な革とは?
「革やライダースを知って、お気に入りを見つけよう」という以前の投稿の中で、革の種類や工程について書いたことがありました。革の種類や鞣し方を調べたり、革を扱うお店に行って革を手に取ってみると、様々な発見があります。着る人、身につける人の主観によって、上質な革の定義は違ってくると思いますが、私が考える「上質な革」の定義は二つあります。
①ファーストインプレッション:まずは革に出会った時の第一印象です。例えば革ジャンなら、見た目、革の着心地、重さ、質感、革の表情を見ます。今年の9月に購入したファインクリークのDeer Leonの場合、2.5mm厚のディアスキンなので持って重いと感じるのですが、着ると肌に吸い付くような感覚を持ちながら重いとは感じません。持つと重いけど、着ると軽いという不思議な革でした。そして2、3回着てみると、本当に革だとは思えないほど着心地がよくて、感動しました。このように第一印象で、虜にさせてくれる革こそ、上質な革と言えると思います。
②経年変化:次に、革の醍醐味は経年変化だと私は考えています。最近の自身のトレンドは馬革なのですが、ホースハイドの魅力は革の艶感とハリ感にあると思います。先日購入したばかりのファウンテンヘッドレザーのBetaですが、ベジタブルタンニン鞣しの1.5mm厚の茶芯ホースハイドを採用。そして顔料仕上げを施しているため、独特な艶感があります。新品の状態は光沢感が強い馬革という感じなのですが、着込めば着込むほどマットな色に変化していくようです。まだ着初めて1ヶ月経ってないので、そこまでエイジングしていませんが、徐々に革の質感や表情が変化していっているのがわかります。今後更なる経年変化を楽しめる、上質な革だと言える1着です。
2. 革のエイジング
革製品のエイジングとは、革を使用していくことによって、革自体や全体の雰囲気が変化していくことを言います。当然ながらどんなレザーでも時間と共に変化していくのですが、一般的に「エイジング」という言葉は、色や艶の変化を味としてとらえる、ポジティブな意味合いで使用されています。新品の革製品を購入する際、「これからどんなエイジングをしていくのかなぁ」と想像し、世界で一つだけの自分のアイテムに育てることが、革製品の醍醐味と言えるでしょう。
しかし、実は全ての革が美しくエイジングするわけではなく、革の施し方によってエイジングするか、しないかが決まってきます。その決め手は、鞣しと染色にあります。
・3つの鞣し方
「鞣し(なめし)」とは、動物の皮から腐敗の原因となるタンパク質や脂肪と取り除いた後、鞣し剤と呼ばれる薬品を浸透させ、内部繊維の結合を強くして皮に耐熱性と耐久性を持たせること。
革の鞣し方は大きく分けて3つあります。それは、クロム鞣し、ベジタブルタンニン鞣し(渋鞣し)、そしてコンビ鞣し。塩基性硫酸クロムと呼ばれる化学薬品を使った「クロム鞣し」は、短時間で大量に生産できるため、最も多くの革製品に採用されている手法です。しかしながら、クロム鞣しは耐久性・耐熱性に優れているので、表情の変化に乏しく、エイジングに向いていません。対して、昔から行われている伝統的な鞣しの手法である、「ベジタブルタンニン鞣し」は、非常に手間と時間がかかります。ですが自然由来のタンニンは、空気に触れると酸化するため、月日が経つにつれて色や表情が変化していきます。そしてこのクロム鞣しとタンニン鞣しの両方を施すのが、コンビ鞣しです。
以上をまとめると、エイジングのしやすさは、ベジタブルタンニン鞣し>コンビ鞣し>クロム鞣しとなります。
・染色方法
皆さんが目にする革の多くは、染色されています(染色されていない革はタンカラーと呼ばれます)。その染色方法によって、革の表情や変化に違いが出てきます。染色には「顔料仕上げ」と「染料仕上げ」の2種類があります。まずは顔料仕上げですが、合成樹脂の仕上げ剤を含む、塗料液で革を仕上げる方法です。革をコーティングするように表面に塗布することにより、銀面(革の表面)の傷を隠し、均一な着色ができるので仕上げに広く用いられています。顔料仕上げは、見た目や色の仕上がりは美しいのですが、革らしい風合いは損なわれ、エイジングしにくい染色方法と言われています。対して「染料仕上げ」は、染料を溶かした水に革を漬け、繊維の間に染み込ませて染める手法になります。文字通り、革に染料を染み込ませているため、傷やシワが付きやすく、色がノリにくい欠点はありますが、革本来の風合いが出やすく、エイジングしやすいです。アニリンを使用することが多いので、別名「アニリン仕上げ」とも言われます。
以上をまとめると、エイジングのしやすさは、染料仕上げ>顔料仕上げ、となります。
鞣しと染色を合わせると、一番エイジングしやすい革の施し方は、ベジタブルタンニン鞣し・染料仕上げになります。革のエイジングを楽しみたい方は、是非渋鞣しの染料仕上げの革製品を選んでみて下さい。
・茶芯
革のエイジングと合わせてもう一つよく出てくるワードは、「茶芯」ですね。茶芯とは、基本的には黒いレザーに対して使われている言葉です。芯が茶色の黒い革が使い込まれることによって、徐々にエイジングし、表面塗装が剥がれ、中の茶色い芯が表面に現れ、黒い革から茶色いコントラストが生じます。この現象を茶芯と言います。あえて茶芯が出ないように黒芯にしてるモノもありますが、私は茶芯モデルがあればそちらを選んでしまいがちですね。
先日、茶芯の出るレザーベルトが欲しくなり、下記のヴィンテージワークスのベルト【茶芯モデル】を購入しました。使い込んで茶芯が出てくるのを、これから楽しみたいと思います。
3. 革のケア
以前靴磨き日本一周のいとさんに会いに行った時に、靴の正しいケアの仕方を教えてもらったのですが、靴に限らず革製品のケアはどれも基本的には同じです。あんまり革を甘やかすのも良くないという考え方もあります。しかしながら革を綺麗にエイジングさせたいなら、5回に1回くらいは下記の方法を試して欲しいと思います。この方法は、革ジャン・靴・鞄・財布など、革製品であればなんでも応用可能です。
❶馬毛ブラシでホコリなどを落とします。
❷ステインクリーナーを塗って、布で擦りながら汚れを落とします。
❸蜜蝋クリーム(エイジングオイル)を指で溶かしながら革の表面に塗っていきます。
下記のようなポリッシングコットンを使って、クリームを伸ばしてあげるのも有効です。
❹今度は豚毛ブラシで磨いていきます。ブラシで磨くことでクリームが革に浸透して、艶が出てきます。
❺少し時間をあけて、ビーズワックス(ポリッシュ)を塗り、布で磨いて浸透させていきます。❺と❻の作業は、革に艶を出した人用です。
❻最後の仕上げに革用ミトン(グローブ)で、しっかり磨いて完成です。
結構手間のかかるケア方法なので、3ヶ月に1回くらいでも良いです。このひと手間が、2年後3年後に綺麗に革がエイジングしていくことに繋がってきます。騙されたと思ってやってみて下さい。革に命を吹き込むようで、案外楽しくなってきますよ。
4. 新しい革を手懐ける方法〜革ジャン編
買ったばかりのピンピンの革ジャンほど、カッコ悪いものはないと言われていますが、この章では「新しい革を手懐ける」自分ならではの方法をいくつか紹介したいと思います。
⑴革ジャンを着て就寝:初夜の儀式と言われるくらい、革ジャンラバーにはご存じの行為ですね。
⑵革ジャン体操:モヒカン小川さん監修の革ジャン体操は↓のYoutubeをご覧下さい。
⑶革ジャンを揉む:暇な時間を見つけて、袖口、襟、ファスナー、ポケットなど揉んであげて下さい。
⑷霧吹きで水を吹きかけて伸ばす:革シャン(革ジャンを着てシャワーを浴びること)は大層な作業になってしまうので、硬い部分や伸ばしたい部分に、霧状の水をかけて伸ばしてみて下さい。
⑸軟化スプレー:野球用ミットにかける軟化スプレーはオススメです。方法はスプレーで適量かけて乾くまで放置します。
⑹ミンクオイルを塗る:ミンクオイルは革を柔らかくしてくれるアイテムなので、こちらも適度に使います。基本的には靴用ですが、革ジャン等にも使えます。
*上記の方法で、少しは革を柔らかくすることができます。しかしハードな革を手懐けるには、革はどれだけ沢山着るかです。エイジングに近道なしとはよく言ったものです。でもそれが革と付き合っていく醍醐味でもあります。
4. 革と向き合っていく
今回は「革のエイジングとケア」について、色々書かせて頂きました。まずはエイジングする革がどういった施しを受けて、作られているかをよく知ることは重要です。そしてエイジングする革は、一般的なクロム鞣し・顔料仕上げよりも時間と手間をかけて作られています。製作できる量も少ないため、渋鞣し・染料仕上げの革製品は値段が高いです。しかしながら、タンナーや革職人の技術やこだわりが詰まった一品なので、大切に育てていきたいですよね。その為には、定期的に正しいケアをしてあげることが大切です。ケアしてもすぐに革の表情に現れる訳でないのですが、1年、2年、3年経っていくと、きっと綺麗なエイジングを見せてくれると思います。そして前の章でも述べましたが、もう一度言っておきたいのは「エイジングに近道なし」、どれだけその革を愛し、沢山着る(使う)かが、エイジングが進むことに繋がります。バイクも適度に乗ってメンテをしっかりした方が良いので、その点は革と一緒です。この投稿を読んでくれた方が、少しでも革(レザー)に興味を持ってくれたら幸いです。ここまでご購読ありがとうございました。
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