ライダーの皆様、ロイヤルエンフィールドというバイクメーカーをご存知でしょうか?私は2年前、純正で購入できるカフェレーサーを探していたのですが、その時コンチネンタルGTというバイクを試乗させてもらいました。並列2気筒の空冷エンジンは、決して速くはないですが非常に乗りやすい印象でした。当時のロイヤルエンフィールドは、インド産のよく壊れる際物バイクという評価が多く、あまり乗っているライダーもいませんでした。しかしながら最近のロイヤルエンフィールドは、スタイリッシュなデザインのバイクを多くリリースしており、街中でエンフィールドのバイクをよく見かけるようになりました。そして今一番熱いバイクメーカーとしてロイヤルエンフィールドは世界中で注目されています。今回は、そんなロイヤルエンフィールドの歴史や戦略、さらには新車で買うことのできる車種を見ていきたいと思います。
1. ロイヤルエンフィールドの歴史 〜世界最古のバイクメーカー
ロイヤルエンフィールドが現存する世界最古のオートバイブランドであることは、きっと知らない方も多いのではないでしょうか。オートバイメーカーとしてロイヤルエンフィールドがイギリスで誕生したのは1901年。今年でなんと創業122年になります。当時は自転車のようなフレームに、1.5馬力のエンジンを積んで販売していました。
その後、ロイヤルエンフィールドはイギリスが誇るオートバイメーカーとして成長していきます。ラインナップは中間排気量二輪車(250~750cc)を手掛け、中でも1932年に誕生した『Bullet(バレット)』は歴史上最も長く継続生産しているオートバイとして有名です。二度にわたる世界大戦を経て、その耐久性とクラシカルな英国スタイルが融合した設計思想はイギリスの自動車・オートバイ最盛期に最前線で活躍しました。
しかし、1960年代に入って日本メーカーなどのイギリス進出によって業績は悪化し、1970年には倒産してしまいます。ただ、ロイヤルエンフィールドのブランドは思いがけない形で復活します。実は1955年に同社はインドに現地工場を設立して生産拠点を移していました。これが幸いし、イギリス本社が倒産した後もインド側が独自に生産を継続し続けることができたのです。その後、インドの商用車大手であるアイシャー・モーターズの一部門として事業を展開するに至り、一世紀を超える伝統のオートバイブランドは守られていくことになりました。
現在はイギリスとインドの2か所に研究開発拠点となるテクニカルセンターを設置し、インド国内の工場からアジア、欧州、北米・南米など世界60か国に輸出しています。取り扱う製品ラインアップは単気筒もしくは2気筒の250~750ccという中排気量~大排気量車が中心です。そして今では各メーカーがほとんど取り扱わなくなった空冷エンジンを、ロイヤルエンフィールドは現在も新車に採用しています。
2. ロイヤルエンフィールドの世界販売台数&「丁度いい」戦略
ロイヤルエンフィールドを語る上で、もう一つ知っておくべきなのが世界の販売台数。小型バイクを除く、中〜大型バイクを生産しているバイクメーカーの中で、ロイヤルエンフィールドは2021年、世界で約60万台を販売しました。これはハーレーダビットソン約22万台、BMW約19.5万台、ドゥカティ約6万台(2021年度世界販売台数)と比べても、エンフィールドの数字が圧倒的だとわかるでしょう。ちなみに2021年日本国内で売れた二輪車(中型以上)の総販売数が40万台超えだったので、やはり60万台は凄い数字ですね。加えて、ロイヤルエンフィールドの生産キャパは100万台あると言われています。それではなぜロイヤルエンフィールドが売れるのか、彼らの戦略とマーケット動向を見ていきたいと思います。
ロイヤルエンフィールドの本拠地は、アジアの大国インド。同国は世界で一番バイクが売れている国で、二輪車販売台数は何と2,000万台以上と言われています(驚)しかしながらインド国内で走っているバイクの大半は小型車やスクーター。そしてインドにおけるエンフィールドの中型〜大型二輪シェアは90%以上です。ロイヤルエンフィールドは、インドマーケットも去ることながら世界でシェアを伸ばすことを視野に入れています。彼らの戦略はズバリ「丁度いいバイク」であること。350〜650ccの丁度いい排気量のバイクを、ハイパワーでもない丁度いい馬力で、丁度いい価格帯で販売することをモットーとしています。ハーレーやドゥカティと戦っている土俵がそもそも違うのですが、こういったところが世界中で支持されている理由かもしれません。それでは次に、新車で購入できるロイヤルエンフィールドの車種についてみていきたいと思います。
3. 新車で購入できるロイヤルエンフィールドの車種&価格
★自動二輪(400cc以下)★
A. メテオ350
メテオ350は、空冷4ストローク単気筒350ccエンジンを搭載した中型クルーザー。最大出力20ps・最大トルク27Nm/4,000rpm・5速マニュアルのスペックなので、決して速く走れるバイクではないですが、ゆったりと走るには最適なバイクです。タイヤサイズはフロント19・リア17インチ、シート高765mmなので背の高くない女性でも足つきがよく、乗りやすいバイクだと思います。そしてタンクはブルー・マットグリーン・イエロー・レッド・ブラックから選ぶことができます。このバイクはホンダ・レブル250やカワサキ・エリミネーター400と比較されますが、私はルックスが可愛いメテオ350を推したいですね。
Price:710,000〜740,000円
B. クラシック350
メテオ350と共通のプラットフォームを使用しているクラシック350。新型クラシック350は1950年代に作られたG2モデルをインスパイアしたモデルということもあり、見た目がレトロな中型ネイキッドバイクです。フロント19、リア18インチのタイヤは直進安定性が高いですが、幅が100と120と細身なので軽くバンクさせることができ、クネクネのワインディングでも楽しく走れます。そしてカラーリングは、写真のデザート・グレードのマットカラーだけでなく、クロムレッドとブロンズ、そしてグレーの全5色から選ぶことができます。とにかくノスタルジックなバイクでゆったりと走りたいライダーには、優しく寄り添ってくれるのがこの「クラシック350」だと思います。このバイクの対抗馬といえばヤマハSRやホンダGB350ですが、ネオレトロな佇まいではクラシック350に軍配が上がるのではと思います(特にタンクカラーがクロムのレッドとブロンズ)
Price:690,000〜730,000円
C. ハンター350
2023年3月に日本に初上陸したハンター350。350cc三兄弟の末っ子としてリリースされましたが、世界では販売開始からわずか6ヶ月で10万台以上販売されており、大ヒットモデルのようです。プラットフォームは上記2車種と共通ですが、とにかくハンター350が一番コンパクトで軽量なモデルに仕上がっています。メテオやクラシックに比べて、車重10キロ以上軽く、ホイルベースも20センチ以上短いのです。加えてタイヤは前後17インチを採用し、シート高も790mmなので、より気軽に乗れるバイクと言えます。しかしながら高速巡行100キロでも全く問題ないので、通勤からツーリングまで幅広く乗れるのがこのハンター350です。
Price:650,000〜660,000円
☆大型二輪(401cc以上)☆
a. ヒマラヤ
HIMARAYANと書いてヒマラヤと読む、エンフィールドが放つライトウエイト・アドベンチャーモデル。BMWのGSシリーズ、ドゥカティのムルティ、トライアンフのタイガーなど様々なメーカーからアドベンチャーバイクがリリースされていますが、快適性とは裏腹にシート高の高さと車体の重さに購入を断念する人が多いのではないでしょうか。そんなライダーに持ってこいのモデルがこのヒマラヤです。重量199キロ、シート高800mmのアドベンチャーは女性でも十分乗りこなせる車格で、空冷単気筒411ccエンジンを搭載しています。ヒマラヤのような標高が高く、きつい坂が続く道を走破できるように、ロングストロークエンジンが採用されています。フロント21、リア17インチのブロックタイヤが採用されているため、林道や悪路も走破できます。そして街中でもゆったりと乗ることができるヒマラヤの燃費は40キロ/L以上。ありそうでなかった単気筒アドベンチャー、一度乗ってみたいと思わせてくれる一台です。
Price:840,000〜870,000円
YUさんが、実際ヒマラヤに数ヶ月乗ってインプレッションしてくる動画です↓
b. スクラム411
2022年秋に日本に導入されたスクラム411は、前述のヒマラヤと共通のプラットフォームを採用。ヒマラヤがアドベンチャーなら、スクラム411はスクランブラーの位置付けでしょうか。ヒマラヤとの違いは、フロント19インチ、車重は5キロ軽い194キロ、シート高は795mm。街中でもワインディングでもより扱いやすい仕様になっています。オフロードでもオンロードでも自分で操って走れるスクラム411は、まさにクロスオーバー・バイクと言えるのではないでしょうか。
Price:830,000〜850,000円
c. INT650
世界ではインターセプター650として販売されていますが、日本名はINT650。(ホンダのVFRにインターセプターというモデルがあるからだそうです)スペックは空冷4ストローク2気筒648ccで、最高出力は48馬力。ん?650ccの大型バイクなのに48馬力しかないの?と思う方もいるかもしれませんが、以前試乗したところ意外にもドコドコ気持ちよく走るバイクです。(決して速いバイクではありません)INT650はバーバンドルを採用しており、アップライトなボジションで目的を選ばない、のんびりとした雰囲気を醸し出しています。ザ・カフェレーサーの前傾ポジションが苦手な方は、このINT650でゆったりとカフェしながら走るのが良いのではと思います。
Price:940,000〜990,000円
d. コンチネンタルGT650
前述のINT650とプラットフォームを共有するコンチネンタルGT650。違いはセパレートハンドルやステップ位置が違うことでしょうか。私がINTとコンチネンタルGT両方を試乗した時に、ポジションがしっくりきたのはコンチネンタルGTでした。(普段カフェに乗っているからです)スラクストンRに比べると48馬力なので非力感は否めないですが、ゆったりと峠を走るには十分なスペックです。このモデルに乗るなら、シングルシートにしてカフェレーサー仕様で走りたいです。そしてもし私が買うなら、青と黒のツートンカラーのタンクを選びますね。インド産でありながら、最もブリティシュな趣を感じるモデルがコンチネンタルGTで、カフェ入門編としては打って付けのバイクだと思います。
Price:970,000〜1,020,000円
YUさんが大変わかりやすく、コンチネンタルGTとINT650をインプレしている動画です↓
4. まとめ
今回はインドのバイクメーカー・ロイヤルエンフィールドについて、色々書いてみました。ライダーの皆様も、少しはエンフィールドに興味を持ったのではないでしょうか。250ccのスーパースポーツバイクですら100万円近くする、物価高騰のご時世で、大型バイクが100万円以下で買えるロイヤルエンフィールドの勢いは世界中で加速しています。そんなに急いでどこへいくと言わんばかりに、丁度良いスペックのバイクをリリースしていくロイヤルエンフィールドは、ある意味最強かもしれません。
そして日本でも正規ディーラーや取扱店が増えてきています。まずはお店を探して、試乗するところからスタートしては如何でしょうか。私も駐車場のキャパがあるなら是非所有してみたい「今、一番熱いロイヤルエンフィールド」でした。
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