バイクを支えるブレーキを知ろう!

前回の投稿では「バイクのタイヤを知ろう!」ということで、タイヤについて色々説明させて頂きました。一見すると地味な黒い2本のタイヤですが、バイクとライダーを様々な面から支える最重要パーツであることがよく分かりました。そして今回取り上げたいのは、「ブレーキ」です。タイヤがバイクを進めるパーツであるなら、ブレーキはバイクを止める重要なパーツです。しかしブレーキはバイクを止める為だけにあらず、様々な角度から我々ライダーをサポートしてくれています。

バイクにおけるブレーキとは、大きく分けて3種類あります。それではまず1つ目のエンジンブレーキから順番に見ていきましょう。

ドゥカティ848のフロントブレーキキャリパー

1. エンジンブレーキについて

エンジンブレーキとは、エンジンが高回転時にスロットルを閉じた(アクセルを戻した)時、ガソリンと空気が最低限しか供給されないため、低回転域に戻ろうとする際に生じる抵抗を制動効果として利用することです。もう少し簡単に言うと、アクセルを戻すとエンジンの回転数が下がり、減速するのです。しかしながら速度域にシフトが合ってないとエンストするので、スロットルを少し煽りながらタイミングよく、シフトダウンする必要があります。

このエンジンブレーキ(以下エンブレ)は、コーナー(カーブ)に差し掛かる前に効果的に減速して、曲がりやすい速度域でコーナーに進入していくのに非常に有効です。フロントブレーキだけでブレーキングするとノーズダイブ(フロントフォークの沈み込み)で前につんのめってしまう可能性があるので、エンブレとフロント・リアブレーキを上手く組み合わせると良いコーナリングができます。

サーキット走行でもエンジンブレーキを使います

他には、見通しの良い交差点など明らかに止まることが予測できる場合に、エンブレであらかじめ速度を落としておきます。するとフロントブレーキだけで停まるより、スムーズにバイクを停車することができます。

下り坂が続く道などでフロント・リアブレーキを多用しすぎると、その摩擦熱がブレーキフルード(ブレーキ液)に伝わって、ブレーキフルードが沸騰し、気泡が発生します。気泡が発生すると、ブレーキペダルによって発生した油圧がブレーキフルードに伝わらず、ブレーキが効かなくなってしまうのです。これを「ベーパーロック現象」と言って非常に危険な状態です。適度にエンブレを使って減速しながら坂道を下ると、こういった危険も回避できて、ブレーキパッドの消耗も軽減することができます。しかしエンブレを多用しすぎると、今度はチェーンやスプロケットに負担がかかるので、何事も適度に使用することが大事ですね。

シフトが抜けてギアが入らなくなって焦りました(900SS時代)

2. フロントブレーキについて

・フロントブレーキの仕組み

バイク教習でブレーキは「フロント7割リア3割」で使った方が良いと教えてもらったように、一番使用頻度が高いのがフロントブレーキになります。一昔前はドラムブレーキ(正直あまり効かない)が主流だったのですが、現代のバイクのフロントにはディスクブレーキ&ブレーキキャリーパーがついています。まずフロントブレーキの仕組みについて説明していきます。

A. フロントブレーキを握ることによって、マスシリンダーがフルード液を押します

右手のブレーキを2本で握ります

B. ホースを伝ってキャリパー内のピストンを油圧で押し出します

C. ピストンがブレーキパッドをローターに押し付けます

ブレンボの4ピストンラジアルモノブロックキャリパー

D. 摩擦によりブレーキがかかります

簡単に表すと上記のような感じになるのですが、右手のフロントブレーキを引くだけで170〜200キロもあるバイクが短い制動距離で止まるとは、昨今のディスクブレーキ技術には恐れ入ります。もう少し詳細を述べると、フロントブレーキ近くにある小型ピストン(面積は小さい)に圧力を加えると、キャリパー内の大型ピストンに圧力が伝わります。大型ピストンの面積が大きいため、「パスカルの定理」により小型ピストンの何倍もの力に変わって、ローターを押しブレーキがかかるというわけです。

・フロントブレーキの上手なかけ方

フロントブレーキを掛けすぎて、前につんのめったり、バランスを崩したりしたことはないでしょうか?フロントブレーキを強く握ると、キャリパーに大きな圧力がかかりディスクがロックされる為、フロント荷重になります。その時、フロントサスが沈み込み過ぎるので、非常に危険です。程度が分かっている熟練ライダーさんは問題ないと思いますが、初心者ライダーはおそらくブレーキを強く握り込んでしまってそういった現象が起こることがあります。

そこで握り込んでしまわない為のテクニックがあります。ブレーキをかける指を手前に引くのではなく、親指を視点にして指を奥へスルッと回す感覚でブレーキをかけてみましょう。するとブレーキレバーを握らなくても、ちょうど良い感じでブレーキがかかるようになります。先ほど述べた「パスカルの原理」により、ブレーキレバーからの少ない力で、ローターには何倍もの力がかかるので、バイクはしっかり止まってくれます。

RIDE HIさんのHPから引用

3. リアブレーキについて

フロントブレーキに比べて、リアブレーキは地味な存在です。フロントブレーキが強力に効くから、リアブレーキは使わないというライダーは意外と多いようです。確かに一昔前のバイクは、リアブレーキを使うと後輪がロックしてしまう現象が起こりました。しかしながらこの10年余りでリリースされた大半のバイクには、リアにもABSが搭載されている為、後輪がロックされることはほとんどありません。

2ピストンフローティングキャリバー

リアブレーキがついている以上、使った方がより効果的にバイクを操ることができます。実際管理人も、リアブレーキをほとんど使わない派だったのですが、昨年受講したオートポリスでの初心者ライディングスクールでリアブレーキの使い方を教わって、だいぶ考え方が変わりました。ライスクの先生曰く、リアブレーキは主に速度調整の為に使うとのことでした。8の字やスラローム走行において、アクセルをパーシャルで開けながらリアブレーキで速度調整するとコーナや回転がスムーズになったのは目から鱗でした。(←熟練ライダーさんからしたら当たり前ですが)

実際に受けたライスクのYoutubeです

・リアブレーキの仕組みと上手なかけ方

フロントブレーキが右手でレバー握るところから始まるのに対して、リアブレーキは右足先で踏むことでブレーキングします。後輪ディスク車の場合は、先ほど説明したフロントブレーキと仕組みは同様です。

リアブレーキのかけ方には、少しコツが入ります。土踏まずにステップバーを載せて、つま先を円運動させます。するとステップバーが支点となり、踵が浮くことなく指先で踏むべダルの踏み加減がコントロールしやすくなります。

ポイントは土踏まずを支点にすることです

・フロントとリアブレーキの併用の仕方

バイクを止める場合、リアとフロントどちらからブレーキをかければ良いのでしょうか。正解は、同時もしくは心持ちリアを先にかけて下さい。フロントが先だとフロントサスが伸びて前につんのめってしまうのに対し、リアを先に使う方がリアサスが伸びるのを抑制し、車体全体が地面に押し付けられバイク全体が安定するからです。

4. ブレーキの3要素

これまでは、エンジン・フロント・リアブレーキの機構や使い方について言及してきました。次に実際ブレーキを使ってバイクをどのように扱うのか、ブレーキの3要素にフォーカスしながら説明しようと思います

❶バイクを止める

これに関してはもう説明不要ですね。とは言っても速度域が速いと、狙った所に止めるのは意外に難しかったりします。つまり教習所の座学で勉強したように、スピードが出ていると制動距離が伸びてすぐに止まれません。これに関しては、1〜3のブレーキングを駆使して、スピードが出ていてもピタッと止まれる訓練をすることです。

❷速度を調整する

速度調整は、バイク運転においてブレーキの重要な役割になります。特にコーナに侵入する時、速度調整ができていないと危険です。サーキットでの転倒は、ほとんどコーナーで起こりますが、1番の理由が曲がりきれないスピードでコーナーに突っ込んでいるからです。言い換えると、ブレーキを使って速度調整ができていないという事です。

❸重心を移動させる(荷重移動)

ブレーキをかけることによって減速Gを発生させることができます。減速Gの大きさは速度やブレーキの大きさによって変わってきますが、コーナーにおける減速Gコントロールの上手さがライダーの技量だったりします。そしてブレーキの減速Gを加えながら荷重をかけ、フロントタイヤをグリップさせながらコーナリングします。

*減速Gとは:減速時に発生する慣性力が重力(1G)に対して何倍かを表す値

748R先輩の荷重移動

❹番外編:サスペンションを縮める

フロントブレーキをかけるとタイヤが止まろうとするので、バイクは慣性で前に進もうとします。その時フロントのサスペンションが縮むため、より強くブレーキングをすることができます。これは、サーキットで直線の高速域からコーナーをスムーズに曲がるための技術です。

まとめ

前章のタイヤに続き、今回もバイクの最重要パーツであるブレーキについて説明させて頂きました。調べれば調べるほどブレーキは奥が深く、「ブレーキを制すればバイクの運転が上達する」のは事実だと思いました。延々と真っ直ぐな道が続くハーレーの国アメリカと比べて、日本は道が狭く・渋滞が多く・カーブが多い道路事情です。つまり公道においてはストップ&ゴーとコーナリングばかりしなければならないということですね。またサーキットでタイムを縮めたければ、「ブレーキングを磨くこと」だとよく耳します。今後、ブレーキング技術を磨きながらバイクライフを楽しんでいきたいと思います。そしてブレーキ関係のメンテナンス(ブレーキパッド・フルード・ローターなど)にも、近い将来自分で挑戦してみようと考えています。

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2件のコメント

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